画面に向かって黙々と作業をしていると、ふと誰とも話していないことに気づく。話したい気持ちはあるのに、チャットを送るのも電話をかけるのも、なんとなく気が引ける。そんな感覚になっていませんか。
私もリモートワークを経験して、この難しさを実感しました。リアルタイムで会話ができない。相手が今忙しいのか、席にいるのかさえ分からない。チャットを打っても、返信が来ない。オフィスなら10秒で済む確認が、丸一日止まることもありました。
「話したいのに、チャットや電話し辛い」「どうやって声をかけたらいいか分からない」「顔が見えないから、状況がわからず不安」――リモートワークならではのこうした感覚は、決して珍しいものではありません。でも実は、送るメッセージにたった一言添えるだけで、「これなら気軽に送れそう」と思える方法があります。
「返信は気が向いたときで大丈夫です」を添えて送る
やることはシンプルです。業務に関係のない一言メッセージを、「返信は気が向いたときで大丈夫です」と添えて送ってみてください。
例えば「そういえば最近どうですか?(返信は気が向いたときで大丈夫です)」。用件がなくても構いません。相手に「今すぐ返さなきゃ」というプレッシャーを与えないことが、送る側にとっても受け取る側にとっても、気軽なやり取りの入り口になります。
孤独は距離ではなく、つながりの頻度から生まれる
理由①:孤独感は距離ではなく、つながりの頻度から生まれる
シカゴ大学の心理学者ジョン・カシオッポの研究によると、孤独感は物理的な距離そのものではなく、つながりの頻度や質に対する主観的な感覚から生まれるとされています。
同じオフィスにいても孤独を感じる人もいれば、離れていてもつながりを感じられる人もいる。つまり、リモートワークだから孤独になるのではなく、小さなやり取りの回数が減ることが孤独感の正体なのです。だからこそ、頻度を取り戻す小さな一言が効果を持ちます。
理由②:本当に大切なものは、目には見えない
サン=テグジュペリの『星の王子さま』にはこんな言葉があります。「本当に大切なものは、目には見えないんだよ」。
顔が見えない、表情が読めない――それでも、相手を気にかけている気持ちそのものは、画面越しでも十分に伝わります。姿が見えないことは、つながりを諦める理由にはなりません。
理由③:返信義務感がなくなると、かえって気軽なやり取りが生まれる
「返信は気が向いたときで大丈夫です」と一言添えるだけで、相手は「今すぐ返さなければ」というプレッシャーから解放されます。
催促されない安心感があると、人は気負わずに反応できるようになります。逆に、返信を急かすような空気があると、かえってメッセージ自体を避けるようになってしまう。プレッシャーを取り除くことが、結果的にやり取りの頻度を増やすことにつながるのです。
私の場合|「急ぎではないです」の一言が、返信を変えた
私がリモートで実際にやっていた工夫は、2つです。
一つは、急ぎの用件はチャットで粘らず、電話やWeb会議に切り替えること。リアルタイムで話すべきことは、リアルタイムの手段で話す。
そしてもう一つが、この記事の解決策とつながる工夫です。急ぎでない用件は、チャットに「急ぎではないです」と一言添えて、あとは気長に待つと決めていました。
効果は、はっきりありました。簡単な内容は、むしろすぐに返ってくるようになりました。そして返すのが大変な内容のときは、「これについては〇日までに返信します」と、相手の方から期限を知らせてくれるようになったのです。相手の状況が見えない不安も、期限が見えることで「待てる」に変わりました。
プレッシャーを外す一言は、相手を遠ざけるどころか、やり取りを軽くしてくれました。私がやっていたのは業務連絡での応用でしたが、原理は同じです。「すぐ返さなくていい」という安心感が、返信のハードルを下げる。業務に関係のない一言メッセージなら、なおさら気軽に送り合えるはずです。
書きかけては消す、をしなくてよくなる
——今までのあなた
朝からずっと、画面の向こうは静かなまま。
「(この質問、送っていいのかな……。今忙しかったら悪いし)」
何度か書きかけては、消す。
思い切って送ったチャットに、返信が来ないまま夕方になる。
「(既読になってるのに……。何か気に障ったかな)」
一人きりの部屋で、不安だけが膨らんでいく。
——一言を添えて送れる、これからのあなた
「〇〇の件、確認したいです。急ぎではないので、手が空いたときで大丈夫です」
送信ボタンを押す手が、軽い。
「(あとは気長に待とう。急ぎじゃないし)」
簡単な用件には、意外とすぐ返ってくる。
「これ、今週金曜までに返しますね」
重い内容には、期限の約束が返ってくる。読めない沈黙が、「待てる沈黙」に変わる。
たまには、業務と関係ない一言も送ってみる。
「そういえば、最近どうですか?(返信は気が向いたときで大丈夫です)」
画面越しの距離は、その一言ずつで縮んでいきます。
プレッシャーのない一言が、つながりを作る
リモートワークで孤独感を感じるときは、業務に関係のない一言に「返信は気が向いたときで大丈夫です」を添えて送ってみてください。プレッシャーのないやり取りは、かえって気軽な繋がりを生みます。小さな一言から、リモートワークの孤独感は和らげていけます。
参考文献
- Hawkley, L. C., & Cacioppo, J. T. (2010). Loneliness matters: A theoretical and empirical review of consequences and mechanisms. Annals of Behavioral Medicine, 40(2), 218–227. doi:10.1007/s12160-010-9210-8

