上司が資料を見てくれない|催促するのではなく、進む日を書いて送る

上司が資料を見てくれない|催促するのではなく、進む日を書いて送る 仕事の進め方・タスク管理

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資料を送りました。返事は、ありません。

午前中に出したのに、夕方になっても何の反応もない。こちらの仕事は、その確認が返ってこないと次に進めません。

「読んでいただけましたか」と聞くべきか。でも、催促だと思われないか。頭の中で文面を作っては消し、リマインドは失礼にならないのかを調べて、例文をいくつか眺めて、結局その日は送らない。

そうしているあいだにも、期限だけが近づいてきます。早めに出した意味は、どこにもありませんでした。

この記事は、その待ち時間をなくすための話です。催促の文面を上手に書く方法ではありません。

催促の文面を考えるのをやめて、進む日を書く

先に書いておきます。見てもらえないのは、あなたの資料の中身が悪いからでも、催促の仕方が下手だからでもありません。

そして、催促をどれだけ工夫しても、待っているという状態そのものは変わりません。返事が来るかどうかを決めるのは、最後まで相手だからです。うまい言い回しを探している時間は、相手が動く確率を少し上げるために使われていて、あなたの仕事を1ミリも進めていません。

だから、変えるのは送り方ではなく、返事が来なかったときに自分がどうするかのほうです。それを送る前に決めて、相手にも書いておきます。

「〇〇の資料をお送りします。△△の部分だけ見ていただけますか。木曜16時までに何もなければ、この方向で進めます。止めるときだけ、一言ください」

この一文を書いた時点で、次に自分が何をするかが決まります。返事が来れば直す。来なければ進む。どちらに転んでも、あなたの手は止まりません。

「待っている」という状態が消えるので、催促するかどうかで悩む場面も、一緒に消えます。

なぜ、送っただけでは沈むのか

理由は3つあります。どれも、あなたの能力や人望の話ではありません。

理由①:文脈のない添付は、静かに沈む

メールやチャットで送るだけでは、あなたの資料は相手のタスクリストの中に静かに沈んでいきます。悪意があるわけではありません。忙しい人の目には、何の資料で、何を判断すればいいのか分からないものは、いつでも後回しにできる荷物に見えるからです。

「見ておいてください」は、相手にとっては「いつでもいい」とほぼ同じ意味になります。そして、いつでもいいものは、たいてい永遠に来ません。

理由②:「いつ・何をするか」まで決まっていると、行動は起きる

心理学に「実行意図」という考え方があります。「いつ・どこで・何をするか」まで具体的に決めておくと、実行率が上がるというものです。ゴルヴィツァーとシーランが94件の研究をまとめたメタ分析でも、この効果は一貫して確認されています。

ここで大事なのは、この効果を相手にではなく、自分に使うということです。相手の実行意図は、こちらからは決められません。決められるのは、自分の側の「木曜の16時に、返事がなければこの方向で進める」という一文だけです。

先に決めておくと、その時刻が来たときに迷いません。「もう少し待つべきか」と考え直す余地が、はじめから無いからです。

理由③:受け取りやすさは、中身の評価まで変える

心理学に「処理流暢性」という考え方もあります。人は、すっと頭に入ってきたものほど好ましく感じるという性質です。レーバーらの実験では、絵の見やすさ(背景とのコントラストや表示時間)を変えただけで、同じ絵が「きれいだ」と評価されやすくなりました。

見てほしい場所を1つに絞るのは、このためです。10ページを「全部見てください」と渡されると、相手は開く前に、必要な時間を計算します。そして、まとまった時間が取れる日まで先送りにします。「3ページ目の表だけ」なら、その計算は要りません。

受け取る側の労力を下げると、中身そのものの印象まで良くなります。届け方は、あなたの評価の一部でもあります。

やること|「〇日〇時までに何もなければ進みます」を書く

送る前に、次の3つだけ決めます。

  • 見てほしい場所を1つ:「△△の部分だけ」。全部ではなく、判断が要るところだけを指す
  • 進む日時:「木曜16時までに何もなければ」。日付だけでなく、時刻まで書く
  • 止める方法:「止めるときだけ、一言ください」。相手の負担を、一番軽い側に置く

3つ目を、忘れずに入れてください。相手にとっては、止めたいときだけ一言返せばよく、そのほかは何もしなくていい形になります。「確認してください」より、ずっと動きやすい渡し方です。

使っていい場面と、使ってはいけない場面

この書き方は、やり直しが利く範囲だけで使ってください。叩き台、社内資料、方向性の確認。あとから直せるものです。

逆に、対外提出、契約、数字の確定、誰かに実害が出る工程では使いません。そこでは「返事がないので進めました」は通りません。止まっていること自体を、上司のさらに上か、別の担当者に伝える段階です。

もうひとつ。期限は、相手が動ける長さにします。当日中や翌朝までにすると、それは宣言ではなく催促になります。中1〜2営業日が目安です。

完成させてから送らない。1割で一度出す

この書き方には、相性のいい出し方があります。完成してから送るのをやめて、1割の出来で一度出しておくことです。

「構成だけ作りました。この方向で合っていますか。金曜16時までに何もなければ、このまま中身を書きます」

こうしておくと、仮に方向がずれたまま進んでしまっても、失われるのは1割分の手間だけです。黙って進むことが怖くなくなるのは、早い段階で一度出してあるからです。完成品を黙って進めるのは、たしかに怖い。であれば、怖くない段階で出しておけばいい。

頼まれた時点で、1つだけ聞き返しておく

そもそも、見てもらう回数は減らせます。仕事を頼まれたその場で、1つだけ聞き返しておくことです。

「これは、誰が見るものですか」

頼む側の頭の中には、たいてい「何のために・誰が見て・どのくらいの粒度か」があります。ただ、それは言われないと出てきません。渡されるのは「会議用の資料お願い」までです。

この1つを最初に聞いておくと、あとから確認してもらう必要のある箇所が、そもそも減ります。聞くなら、送ったあとではなく、受け取った瞬間のほうが安く済みます。

送信した時点で、もう待っていない

——今までのあなた。

送信ボタンを押してから、ただ待つ。夕方になっても返事はない。「確認しましたか」と聞くべきか、催促と思われないか、頭の中で文面を作っては消す。翌朝おそるおそる開いたチャットにも、何の気配もない。仕事は止まったまま、モヤモヤだけが積もっていきます。

——進む日を書くようになった、これからのあなた。

送信した時点で、カレンダーには「木曜16時・返事がなければ着手」と入っています。返事が来れば直す。来なければ、その時刻に予定どおり進める。どちらでも困りません。

実際には、返ってくることのほうが増えます。放っておけば進んでしまうと分かるからです。それでも返ってこなければ、そのまま進みます。無断ではありません。書いてあります。

私も、上司に見てもらえない時期が長くありました。メールで送り、印刷して手渡しまでして、それでも返事は来ない。期限のだいぶ前に叩き台を出しても、見てもらえるのは結局ギリギリでした。そのころ私が使っていたのは、他部署への提出物に「上司確認前の暫定版です」と断って先に出してしまう方法です。咎められたことは一度もありません。むしろ、第三者の目が入ることで、上司ひとりの確認に頼っていたころより精度は上がりました。

「読んでるのかな」「催促したら感じ悪いよな」「早く出した意味なかったな」。そう思っていた時間が、そっくりなくなります。

返事がないことも、返事だった。そう決めておけるだけで、止まっていた仕事が動き出します。

今日やること

次に送る1通に、一文だけ足してください。

「〇日〇時までに何もなければ、この方向で進めます。止めるときだけ、一言ください」

見てほしい場所を1つに絞るのも、1割で出しておくのも、そのあとで構いません。まずは、進む日を書くところからです。

それでも、止められ続けるなら

進む日を書いて送っても、その日が来るたびに止められる。あるいは、進んだあとになって「聞いていない」と言われる。それが続くなら、これは届け方の問題ではありません。

判断は返ってこないのに、進むことも許されない。決める人がいない場所で働いている、ということです。そこでは、個人の工夫はもう効きません。

ただ、その状態が「どこの職場にもあること」なのか「さすがにおかしい」のかは、社内にいると分からなくなります。周りも同じように止まっていれば、それが普通に見えてしまうからです。

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ただし、これは何度か試したあとの話です。今日やることは、次の1通に一文を足すことだけで足ります。

返事がないことも、返事だった

見てもらえない資料は、中身が悪いから沈んだのではありません。判断のしかたが書かれていなかっただけです。そして、待っているあいだは、こちらの時間だけが減っていきます。

相手が動くかどうかは、こちらでは決められません。決められるのは、動かなかったときに自分がどうするかだけです。それを先に書いておけば、沈黙は、ただの沈黙ではなくなります。

次の1通に、進む日を書いてください。送信ボタンを押した時点で、あなたはもう待っていません。

参考文献

  • Gollwitzer, P. M., & Sheeran, P. (2006). Implementation intentions and goal achievement: A meta-analysis of effects and processes. Advances in Experimental Social Psychology, 38, 69–119. doi:10.1016/S0065-2601(06)38002-1
  • Reber, R., Winkielman, P., & Schwarz, N. (1998). Effects of perceptual fluency on affective judgments. Psychological Science, 9, 45–48. doi:10.1111/1467-9280.00008(著者公開PDF)

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