チームメンバーが離脱すると、一気にいろいろな問題が噴き出す。士気は下がるし、引き継いだ業務は回らないし、残ったメンバーは不安そうにしている。全部を同時に何とかしようとして、結局どれも中途半端になっていないだろうか。
実は、離脱後に起きる問題は大きく3つの症状に分けられる。チーム全体の士気の問題、引き継ぎ・業務の問題、個々のメンバーの心理的な不安の問題だ。全部に同じ対処法が効くわけがない。
この記事では、あなたのチームで今いちばん強く出ている症状はどれかを整理して、それぞれに合う対処法の記事を紹介する。
なぜ離脱後の対処法は一つじゃないのか
一口に「離脱後の対応」と言っても、次の3つはまったく別の話だ。
- チーム全体の空気が沈んでいる(士気の問題)
- 引き継ぎが不十分で、業務そのものが滞っている(業務の問題)
- 残ったメンバーが、口には出さないが不安を抱えている(心理面の問題)
自分のチームで今いちばん強く出ている症状から選んでみてほしい。
パターン①:チーム全体の士気が下がっている
メンバーが抜けた後、チームの空気がどこか重い。このまま放っておくと、不安は憶測を呼んで、さらに悪い方向に広がってしまう。大事なのは、なるべく早く、チームに一言伝えることだ。
パターン②:引き継ぎが不十分で、業務が滞っている
誰が何を持っていたのか把握しきれず、抜け漏れが起きている状態。この場合は、感覚で引き継ぐのではなく、型に沿って一枚にまとめてもらうことで、複数人での分担がしやすくなる。
パターン③:個々のメンバーの心理的な不安が広がっている
全体へのアナウンスだけでは拾いきれない、一人ひとりの不安。これは、全体に向けた言葉ではなく、1対1で本音を聞く場を作ることで初めて見えてくる。
何を渡したかを振り返れば、症状は分かる
どの症状が出ているかは、メンバーの様子を眺めても分かりにくい。表に出ないからだ。代わりに、自分がこれまでに何を渡したかで確認したほうが早い。
離脱の発表から今日までを振り返って、次の3つに答えてみてほしい。
- 離脱の経緯と当面の分担を、チーム全体に説明したか → していないなら①のリスク
- 抜けた人が抱えていた仕事の一覧(優先度・引き継ぎ先つき)はあるか → ないなら②のリスク
- 一人ひとりに個別に「気になっていることはある?」と聞いたか → 聞いていないなら③のリスク
3つとも「していない」なら、メンバーの中ではもう3つとも始まっていると考えたほうがいい。理由は、次に書く。
私の場合|説明のない発表から、3つ全部が連鎖した
私はこの3つを、リーダー側ではなく、残されたメンバーの側として一度に全部経験した。
先輩が異動でチームを抜けたときのことだ。発表は突然で、リーダーや上司からチームへの説明は特になかった。経緯も、今後の分担の話もない。正直、そのときの私は「自分の仕事に影響は出ないだろう」と思っていた。それでも、チームの環境が変わるのに何の説明もないという事実に、「このチームで大丈夫かなぁ」という不安がわいてきた。これが①だ。
その不安は、口に出されないまま残り続けた。立場的に、リーダーへ「説明がなくてモヤモヤしています」とは言いにくい。そして個別に「気になっていることはある?」と聞かれる機会は、一度もなかった。これが③だ。
そのまま時間が過ぎ、結局、私は先輩の作業を引き継ぎもないまま任されることになった。不安は現実になった。何をして良いか分からず、周りの人や依頼者に仕事の内容や目的を確認し、先輩が残した過去の成果物を掘り返しながら手探りで進めるしかなかった。急に湧いてきたタスクに自分の時間は削られ、見通しが立たないまま、作業のあいだずっと不安だった。これが②だ。
振り返って分かるのは、①②③が別々に起きたのではない、ということだ。説明がなかったことが不安を生み(①)、それを言い出せないまま抱え込ませ(③)、一覧がないまま仕事だけが降ってきた(②)。すべては、最初の沈黙から連鎖していた。
裏を返せば、こうも言える。3つを別々の問題として順番に潰していく必要はない。最初の一言さえ出ていれば、3つとも、ここまで大きくはならなかったはずだ。
重なっているなら、チームへの一言から
「士気も下がっているし、業務も滞っている」というように、複数が同時に出ている場合も多いはず。その場合は、次の順番で進めるとよい。
- ①チームへの一言 —— 経緯と当面の分担を伝える。今日できて、3つすべてに効く
- ②仕事の一覧 —— 優先度と引き継ぎ先を一枚に。業務の穴を塞ぐ
- ③1対1で聞く —— ①②で表に出なかった不安を拾う、最後の網
①を先頭に置くのは、それが連鎖の起点だからだ。すべてが決まっている必要はない。「経緯は△△です」「当面はこの分担で、詳細は決まり次第また共有します」——この程度で十分に効く。
そして③を省かないでほしい。メンバーは、立場的に自分からは言い出せない。聞かれるのを待っている。沈黙される側を経験したからこそ、これだけは断言できる。
抜けた穴の場所で、打ち手が変わる
メンバー離脱後の対応は、一つの解決策ではなく、症状によって打ち手が違う。自分のチームに今いちばん強く出ている症状から、今日一つだけ試してみてほしい。

