自分だけ仕事量が多くて不公平なときの対処法|全部見せて、優先順位を決めてもらう

仕事の進め方・タスク管理

「なんで自分だけ、こんなに仕事があるんだろう」

まわりを見渡すと、手が止まっている人もいれば、余裕そうに見える人もいる。それなのに定時になるとみんなは帰っていき、自分だけがまだ机に向かっている。頑張っているのに報われない。その理不尽さに、じわじわと疲弊していく。

実は、仕事が速い人ほどこの状況に陥ります。「あの人に頼めば早い」と、気づかないうちに仕事が集中してしまうからです。自分に仕事が集中するのは、あなたが仕事をできる人だからという側面もあります。でも、それはあなたが無限に引き受け続けていい理由にはなりません。

足りないのは、能力でも気合でもありません。たった一つ、「順番」です。

全部書き出して、優先順位を上司に決めてもらう

やることはシンプルです。

いま抱えているタスクと、これから発生しそうなタスクを、すべて紙かメモに書き出す。そのリストを上司に見せて、「どれから手をつけるべきですか」と聞く。優先順位が低いと分かった仕事は、堂々と後回しにする。これだけです。

ポイントは、自分ひとりで「どれを先にやろう」と抱え込まないことです。順番を決める判断そのものを、上司にゆだねてしまいます。

なぜ、見せるだけで状況が動くのか

理由① 「忙しい」は、言葉では伝わらない

「忙しいです」と口で言っても、相手には届きにくいものです。上司の目には、あなたがこなしている仕事の全量が見えていません。見えていないものは、量として伝わりようがないのです。

これは上司の怠慢とは限りません。人が持っている情報は、その人の位置からしか見えないからです。だからこそ、感情で「多すぎます」と訴えるより、事実を並べて見せるほうが早く伝わります。

理由② 書き出すと、感情と事実が分かれる

「自分だけ不公平だ」という感覚は、頭の中が混乱しているときほど大きく膨らみます。頭の中にあるものを外に出す作業には、そのもつれをほどく働きがあります。ペネベーカーらの研究では、抱えているものを書き出すことが、気持ちの整理そのものに効くことが示されています。

書き出してみると「確かに多い」と分かることもあれば、「思ったより整理できていた」と気づくこともあります。どちらにせよ、書き出した後のほうが冷静に次の一手を考えられます。

理由③ 全部を同時に抱えると、かえって全部が遅れる

「あれもこれも」と複数の仕事を同時に抱えると、一つひとつの質もスピードも落ちます。ルビンスタインらの実験では、作業を切り替えるたびに時間の損失が生じ、切り替えが複雑になるほどその損失は大きくなることが確認されています。

優先順位をつけて一つずつ片づけたほうが、結果的に多くの仕事が早く終わる。後回しは「サボり」ではなく、全体を早く進めるための順番の付け方です。

何を書き出せばいいのか

「全部書き出す」と言われても、何を並べればいいか迷うかもしれません。次の3つが入っていれば十分です。

  • いま進行中のタスク名と、それぞれにかかりそうな時間
  • 締め切りが重なっているものの一覧
  • 先週・今週に片づけた仕事の量

3つ目を入れるのがコツです。抱えている量だけを見せると「大変そうだね」で終わりますが、こなした量を並べると「この人はこれだけ回している」という事実が一緒に伝わります。手を抜きたいから見せるのではない、と言わずに示せます。

体裁は整えなくてかまいません。メモ帳の箇条書きで十分です。きれいな資料を作ろうとすると、それ自体が新しい仕事になってしまいます。

「後回しでいい」と言われた仕事は、どうなるのか

優先順位が低いと分かった仕事は、消えるわけではありません。順番が後ろになるだけです。

それでも意味があります。自分の判断で後回しにすると「サボっている」という後ろめたさが残りますが、上司が決めた順番なら、それは業務上の判断です。あとで「なぜこれが遅れているのか」と聞かれても、「先にこちらを優先する判断でした」と答えられます。

『7つの習慣』のスティーブン・コヴィーは、第3の習慣として「最優先事項を優先する」ことを挙げました。すべてを同じ全力でやろうとすると、限られた時間はあっという間に溶けていきます。何を先にやり、何を後に回すか。その線引きこそが、仕事に追われる側から、仕事を動かす側へ変わる分かれ道になります。

そして今回、その線引きを一人で背負う必要はありません。決めるのは上司で、あなたは見せるだけです。

私の場合|一覧を見せたら、その場で優先順位が決まった

成果物をバンバン作っていた時期のことです。気づけば、帰れないのはいつも自分だけでした。まわりは手が止まっていたり、ぼーっとしていたりするのに、なぜか自分にばかり仕事が積み上がっていく。

ただ「忙しいです」と言うだけでは伝わらないだろうと思いました。そこでやったのが、今あるタスクをすべてリスト化することです。頭の中で抱えているだけだった仕事を、一覧にして書き出す。そうすると、自分がどれだけの量を抱えているのか、ボリューム感を目に見える形で渡せました。

口頭で「多い」と訴えるのとは、伝わり方がまるで違いました。一覧を見せると、上司は状況をちゃんと理解してくれた。そして「じゃあ、これをやって」と、その場で優先順位を決めてくれたのです。優先順位の低い仕事は、いくつか後回しでよいと分かりました。

その日から、私は定時で帰れるようになりました。抱えていた量そのものは、何も変わっていないのにです。

まだ明るいうちに、席を立てるようになる

見える化せずに抱え込んだままだと、こうなります。

「自分だけこんなに多いのに」と思いながら、口では「大丈夫です」と言ってしまう。上司には忙しさが伝わらず、「じゃあこれもお願い」とさらに仕事が増える。「なんで気づいてくれないんだろう」と、一人で抱えて消耗していきます。

では、一覧にして見せたらどうでしょうか。

「今、これだけ抱えていまして」と差し出す。上司が「ああ、こんなにあったのか」と表情を変える。「じゃあ、これを優先して。あとは後回しでいい」と、その場で交通整理をしてくれる。

定時のチャイムが鳴る。あなたはパソコンを閉じて、席を立つ。外に出ると、空はまだ明るい。

「でも、後回しにしたら評価が下がるんじゃ……」と不安になるかもしれません。けれど、優先順位を握っているのは、あなたではなく上司です。聞いて決めてもらえば、その判断の責任も一緒に預けられます。

全部を、あなたが背負わなくていい

自分だけ仕事が多いのは、あなたが弱いからでも、断る勇気がないからでもありません。頼りにされている証拠でもあります。でも、頼られることと、一人で抱え込むことは違います。

今日、5分だけ時間を作って、抱えているタスクをすべて紙に書き出してみてください。そして次に上司と話せるタイミングで、「優先順位を教えてください」と一言。

その一言が、あなたを終わらない残業から連れ出してくれます。

参考文献

  • Pennebaker, J. W., & Beall, S. K. (1986). Confronting a traumatic event: Toward an understanding of inhibition and disease. Journal of Abnormal Psychology, 95(3), 274–281. doi:10.1037/0021-843X.95.3.274
  • Rubinstein, J. S., Meyer, D. E., & Evans, J. E. (2001). Executive control of cognitive processes in task switching. Journal of Experimental Psychology: Human Perception and Performance, 27(4), 763–797. doi:10.1037/0096-1523.27.4.763
  • Covey, S. R. (1989). The 7 Habits of Highly Effective People. Free Press.(邦訳『完訳 7つの習慣』キングベアー出版)
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