リーダーの言うことが毎回変わるときの対処法|指示を受けたその場で、3点を復唱する

上司・職場の人間関係

「またやり直しするの?」

先週、あれだけ時間をかけて仕上げた資料が、リーダーの一言でゼロからやり直しになった。「それが正しいなら、初めから言ってよ」と言いたくなる気持ちを飲み込んで、また作り直す。何度も同じことが続くと、「結局、何が大切なの?」と、指示そのものが信じられなくなってくる。

真面目に取り組んでいる人ほど、この徒労感は大きい。指示通りに動いたはずなのに、その指示自体が変わってしまう。自分の努力ではどうにもならない部分で振り回されているような感覚は、じわじわと消耗する。

私にも覚えがある。事前に方針を聞いて作業を進めていたのに、途中で再確認すると方針が変わっていたのだ。当然、作業はやり直し。もし確認していなければ、間違った方向のまま最後まで進み切っていたかもしれない。

「そうは言っても、リーダーが変わらない限りどうしようもない」——そう思うかもしれない。相手を変えるのは難しいが、指示の受け止め方と、記録の残し方を変えることならできる。

指示を受けたその場で「3点」を復唱する

やることはシンプルだ。指示を受けたその場で、「①今回の指示 ②その前提条件 ③いつまでの話か」の3点を、自分の言葉で復唱する。そして「承知しました。〇〇という前提で、△△までに進めますね」と一言だけ、チャットやメールに残す。

これだけで、後から指示が変わったときの意味合いが変わる。「自分が間違えた」のではなく「前提条件が変わった」という事実として扱えるようになるからだ。

「本当にそれだけで変わるの…」

そう思うかもしれません。でも、これには理由があります。

理由① 判断は「そのときの情報」でしか下せない

心理学では、人の意思決定は「限定合理性」の範囲で行われるとされている。つまり誰であっても、今手元にある情報の中で最善を選んでいるにすぎない。後から新しい情報が入れば、判断が変わるのはむしろ自然なことだ。

リーダーの指示が二転三転するのも、気まぐれでコロコロ変えているわけではなく、多くの場合、上からの情報や状況そのものが更新されているからだ。「なぜ初めから言ってくれなかったのか」という怒りは、「リーダーは最初から全てを知っていたはずだ」という、実は成立していない前提から生まれている。

理由② 計画より「更新し続ける姿勢」に価値がある

第二次大戦の連合国軍最高司令官であり、後にアメリカ大統領となったドワイト・アイゼンハワーはこう語っている。

「計画は役に立たない。だが、計画を立てることは不可欠だ」

状況が変われば、計画も変わって当然だ。大切なのは計画の中身そのものではなく、その都度アップデートし続ける姿勢だという意味だ。リーダーの指示が変わることは、計画が破綻している証拠ではなく、むしろ状況に向き合い続けている証拠かもしれない。指示の中身に一喜一憂するより、変化に対応できる仕組みを自分の側に持っておく方が、はるかに現実的な戦い方だ。

理由③ 「言った・言わない」は、記録がないから起きる

職場での対立の多くは、悪意からではなく、記憶と認識のズレから生まれる。人は自分に都合よく記憶を書き換える傾向があるとされ、これはリーダー自身にも当てはまる。本人は「そう言ったつもり」でいることが珍しくないのだ。

そこに記録がなければ、水掛け論になるしかない。逆に言えば、指示を受けた直後に自分の言葉で復唱し、一言だけ残しておくだけで、その土俵に乗らずに済む。次に指示が変わったときも、感情的にならず「前提が変わったんですね、承知しました」と淡々と確認できるようになる。

私の場合|復唱と備忘録メールで、「方針間違いのまま進む」ことがなくなった

私が実際にやっていたのは、この記事の型とほぼ同じだ。

指示を受けたら、最後に「確認ですが、〇〇という方針で△△を進める、ということですね」と復唱して再確認する。電話で依頼を受けたときは、その後に備忘録として、作業内容をメールで送っておく。

効果はすぐに表れた。復唱やメールの内容に間違いがあれば、その場で「あ、そこは〇〇で」とすぐ訂正が入るのだ。

つまり、認識のズレが「作業を進めた後」ではなく「作業を始める前」に見つかるようになった。方針間違いのまま進んでしまうことが、なくなった。

方針が変わること自体は、私にも止められなかった。それでも、復唱と一通のメールが早期発見の網になってくれる。変更があっても、被害はやり直しではなく「作業前の軌道修正」で済むようになった。

「方針変わったから」で作り直しにならない

想像してみてほしい。

今のあなたは、時間をかけて仕上げた資料を持って、リーダーの席に向かっている。

「あ、ごめん。あの件、方針変わったから。作り直してもらえる?」

「……わかりました」

心の中では別の言葉が渦巻いている。

「それ、最初に言ってよ……」

その夜はまた、やり直しの残業だ。

でも、復唱と記録を残せるようになったあなたは、違う。

指示を受けたら、その場で最後に確認する。

「確認ですが、〇〇という方針で△△を進める、で合っていますか?」

「あ、ごめん、そこは〇〇に変わったんだ」

——訂正が入るのは、作業を始める前。やり直しは発生しない。

電話で受けた依頼は、切った後に備忘録のメールを一通送っておく。返ってくるのは短い一言だ。

「メールの内容でOKです」

それでも方針が変わる日はある。そんなときも、あなたはもう身構えない。

「前提が変わったんですね。承知しました」

やり直しの意味が「自分のミス」から「状況の更新」に変わる。振り回されるだけだった関係が、お互いに確認し合える関係へと変わっていく。それは、リーダーが変わったからではなく、あなたの受け止め方が変わったからだ。

振り回される側から、受け止め方を選べる側へ

リーダーの言うことが変わるのは、なくならないかもしれない。それでも、振り回される側から、受け止め方を選べる側へ。その一歩は、次に指示を受けたときの「一言」から始められる。

参考文献

  • Simon, H. A. (1955). A behavioral model of rational choice. The Quarterly Journal of Economics, 69(1), 99–118. doi:10.2307/1884852
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