「上司に相談したいことが、いくつも溜まっている」
「でも、そのたびに時間をもらうのは申し訳ない」
「結局、全部自分の判断で進めて、後から『先に聞いてよ』と言われてしまった」
忙しい上司に、毎回時間をもらうのは気が引ける。
その遠慮が積み重なって相談はどんどん先送りになり、小さな詰まりが仕事のあちこちに溜まっていきます。
でも、問題は「上司に時間がないこと」ではないかもしれません。
「相談のたびに、毎回お願いしなければならない」という仕組みのなさこそが、あなたを苦しめているのです。
振り返れば、私がこれまで働いてきた職場には、上司との定期的な相談の場というものがありませんでした。あっても、半年か1年に一度の面談だけ。日々の小さな疑問を受け止めてくれる仕組みは、どこにもなかったのです。
だから私は、ピリピリした上司の様子を観察し、傷つく覚悟で話しかけて、どうにか相談の機会をつかんでいました。それで乗り切れはしましたが、正直、消耗も大きかった。
当時の私に教えてあげたいのが、これからお話しする方法です。仕組みがないなら、自分から小さな仕組みをお願いすればいい。
今日は一つだけ、やり方を変えてみてください。
「週1回10分だけ」の定期的な相談枠をお願いするだけでいい
言い方は、これだけです。
「相談やご報告をまとめてお伝えしたいので、週に1回、10分だけお時間をいただけませんか」
ポイントは、「10分だけ」と短さを先に示すことです。かかる時間が見えているお願いは、上司にとって格段に受けやすくなります。
「そんなお願いをしていいの?」
そう思うかもしれません。でも、これには理由があります。
理由① 定期枠は「話しかける決断」をゼロにする
行動経済学では、人は「毎回選択が必要なこと」を先送りし、「デフォルト(初期設定)になっていること」は自然と実行できることが知られています。ナッジ理論で知られるリチャード・セイラーらが示した「デフォルトの力」です。
都度の相談は、毎回「今話しかけていいか」という決断が必要です。だから、先送りしてしまう。
でも週1回の定期枠があれば、相談は「決断すること」から「予定どおりにやること」に変わります。意志の力に頼らずに相談できる仕組みが手に入るのです。
理由② 細切れの割り込みより、まとまった10分のほうが上司もラク
経営学者ピーター・ドラッカーは、こう述べています。
「成果をあげる者は、時間をまとめる」
実は、都度の「ちょっといいですか」を5回受けるより、まとまった10分で5件まとめて聞くほうが、上司の負担はずっと軽いのです。
つまり定期枠のお願いは、上司の時間を奪う提案ではなく、上司の時間を守る提案でもあります。だからこそ、遠慮せずに切り出していいのです。
理由③ 定期枠は「相談の締切」になり、相談の質が上がる
週1回の枠が決まっていると、不思議なことが起きます。「次の10分までに、相談したいことをまとめておこう」と、相談事項が自然に整理され始めるのです。
締切があるからこそ、人は準備をします。バラバラだった疑問がリストになり、優先順位がつき、10分で済む質の高い相談に変わっていく。上司にとっても、あなたの状況を定期的に把握できる安心材料になります。
10分を倍に活かす「相談の型」
週10分と聞くと、「そんな短時間で足りるの?」と思うかもしれません。でも、準備の型があれば、10分はかなり長い時間です。
私がピリピリした上司への相談で実際に使っていた型を紹介します。定期枠と組み合わせれば、効果は倍になります。
- 結論から話す(「〇〇の件、△△か□□かで迷っています」)
- 質問はYESかNOで答えられる形にしておく(「この方向で進めてよろしいですか」)
- NOと言われた場合の代替案も用意しておく(「難しければ、こちらの方針で進めます」)
この型で1件を整理しておくと、相談は1〜2分で片づきます。つまり10分あれば、溜まった疑問を5件は解消できる計算です。
疑問の溜め方も簡単で、思いついたその場でメモに放り込んでおき、定期枠の直前に順番を並べ替えるだけ。「覚えておかなきゃ」という頭の負担からも解放されます。
実際、私はこの準備のおかげで、機嫌の読めない上司からでも、その場で判断をもらえるようになりました。準備された相談は、忙しい上司にとっても「すぐ終わる、ありがたい時間」になるのです。
断られても、相談したい意思は伝わる
「でも、『そんな時間は取れない』と断られたら気まずいな」
そう思うかもしれません。もし断られても、「では、まとめてチャットでお送りしてもいいですか」と切り替えれば大丈夫です。お願いしたこと自体が「きちんと相談したい」という意思として伝わるので、マイナスには決してなりません。
それに、私の経験では、上司は返信をしないだけでチャットを読んでいることが多いものです。送っておけば、次に顔を合わせたとき、話は驚くほど早く進みます。
定期枠を手に入れたあなたは、もう「話しかけていいか」で悩んでいません。
疑問はメモに溜めておき、週1回の10分で一気に解消する。曜日は金曜の夕方など、週の区切りに置くのがおすすめです。上司との会話が定例になることで、ちょっとした相談のハードルそのものも下がっていきます。
半年に一度の面談を待つしかなかった私の頃と比べれば、週10分の定期枠は、それだけで大きな武器です。観察も覚悟もいらずに、確実に相談できる時間が毎週やってくる——あの頃の私が、喉から手が出るほど欲しかったものです。
毎回お願いする仕組みのままだから、頼めない
相談できないのは、上司に時間がないからでも、あなたが遠慮しすぎだからでもありません。相談が「毎回お願いする仕組み」のままだからです。
今週、一度だけ言ってみてください。「週に1回、10分だけお時間をいただけませんか」と。
その10分が、あなたの溜め込んだ「聞きたいこと」と一緒に、仕事の詰まりを流してくれます。
参考文献
- Johnson, E. J., & Goldstein, D. (2003). Do defaults save lives? Science, 302(5649), 1338–1339. doi:10.1126/science.1091721

