「周りはバタバタしてるのに、自分だけ仕事がない」
「何かしなきゃと思うけど、何をすればいいか分からない」
「暇なのに『手伝います』って言いにくい雰囲気がある」
「こんな状態で給料をもらっていていいのか、なんか申し訳ない」
「時間だけが過ぎていって、自分がどんどん置いていかれる気がする」
周りが忙しそうにしているのに、自分の手が止まっている。「暇です」と言い出せない空気の中で、ただ時間をやり過ごすのがつらい。
私にも同じ時期がありました。当時の職場は全員が忙しすぎて、仕事はあるのに、それを切り分けて人に振る余裕が誰にもない。結果、私の手元の仕事はどんどん減っていき、周りが残業する中で自分だけ手が空いている——そんな状態でした。
暇な時間があることは、サボっているわけでも、必要とされていないわけでもありません。でも、そのまま待ち続けても状況は変わりません。
暇な時間が、なぜこんなに消耗するのか
「暇なんだから楽なはずなのに、一日の終わりにはどっと疲れている」——これは気のせいではありません。
フィンランドの87の組織を対象にした調査では、仕事中の退屈は「休めている状態」ではなく、心身の健康度の低さや、離職を考える気持ちの強さと結びついていました(Harju, Hakanen & Schaufeli, 2014)。
さらに、退屈に「この仕事に意味を感じられない」「成長している実感がない」が重なった状態はボアアウトと呼ばれます。サービスの現場で働く人を対象にした研究では、この状態にある人ほど、自分で工夫して新しいやり方を生み出す行動が減っていました(Stock, 2014)。
つまり、暇がつらいのは、あなたの気持ちが弱いからではありません。手を動かしていない時間そのものが、じわじわとあなたを削っていく——そういう構造になっています。だから、気持ちを立て直そうとするより先に、手を動かす対象を作ってしまうほうが早く効きます。
今日は一つだけ、動き方を変えてみてください。
「今できること」を自分でリストアップするだけでいい
「リストアップしたって仕事がなければ意味ない」
そう思うかもしれません。でも、これには理由が3つあります。
理由① 「仕事を待つ」から「仕事を作る」に切り替えるだけで、気持ちが変わる
仕事がない状態で一番つらいのは、「何をすればいいか分からない」という漠然とした不安です。そのまま待っていると、時間だけが過ぎて焦りが積み重なります。
経営学にはジョブ・クラフティングという考え方があります。与えられた役割をそのまま受け取るのではなく、働く本人が「仕事の範囲」「関わる相手」「仕事の意味づけ」を自分で作り替えていく、という見方です(Wrzesniewski & Dutton, 2001)。手が空いている時期は、この作り替えがいちばんやりやすいタイミングでもあります。
まず、こんな視点でやることをリストアップしてみましょう。
- 後回しにしていたけど、やっておくべきこと(書類整理、データ更新など)
- 自分のスキルアップにつながること(業務に関連する知識を調べる、資料を読む)
- チームで共有できるまとめ資料や手順書が作れないか
「仕事を待つ」から「仕事を作る」に切り替えるだけで、受け身の焦りが、能動的な行動に変わります。
理由② 暇な時間は、忙しいときにはできないことをする絶好の機会
忙しい状態では、目の前の仕事をこなすことで精一杯です。じっくり考える時間も、新しいことを学ぶ時間も取れません。
余白のある時間は「戦略的に使える時間」です。
ただし「時間があるうちに何かやっておこう」という漠然とした構えのままだと、結局なにも進みません。目標設定の研究では、具体的で少し歯ごたえのある目標のほうが、「できるだけ頑張る」より高い成果につながることが繰り返し確認されています(Locke & Latham, 2002)。リストに書くときは「勉強する」ではなく「手順書の3章を今週中に書く」まで落としてください。それだけで、余白の時間が実際に動き出します。
手順書を整備する、業務の改善案をまとめる、資格の勉強をする——これらは忙しいときには後回しになりがちなことです。暇な今だからこそ、時間をかけて取り組める。暇はピンチではなく、チャンスです。
理由③ 自分から動いた実績が、周囲からの信頼になる
「勝手に動いたら余計なことをしたと思われそう」という心配はわかります。でも、何もせずに座っているより、自分で考えて動いた方が、「この人は自律的に動ける人だ」という印象を残します。
指示を待たずに自分から始め、先を見て動き、途中でうまくいかなくても続ける——こうした行動はパーソナル・イニシアチブという名前で研究されていて、仕事の中身が変わり続ける職場ほど重要になる行動として整理されています(Frese & Fay, 2001)。暇な時期は、この行動をいちばん低いリスクで試せる時期でもあります。
リストアップした内容を上司に「今これに取り組んでいます」と一言共有するだけで、評価は変わります。暇な時期に何をしていたかは、忙しくなったときに差として現れます。
私の場合|「CCメール」が、今できることの宝庫だった
その状態から抜け出すために、私がやっていたことは2つです。
一つは、単純に自分から仕事を貰いに行くこと。ただ、みんな忙しすぎて、「何か手伝えることはありますか」と話しかけるタイミングすら見つからない日もありました。
そこでもう一つやっていたのが、「CCメールから仕事を拾う」ことです。上司宛のメールのCCに入っていれば、問い合わせや依頼の内容は見えます。誰かに振られるのを待たず、その要件を先回りして調べ、動き始めておくのです。
正直な結果も書いておきます。こうして動くと仕事量は増えましたが、「振られる仕事」はむしろ減りました。「あの人は勝手に動いてくれる」と思われていたのだと思います。だから、動くときは必ず一言報告する——これはセットで必要でした。
それでも、得たものは大きかった。少なくとも動いている間、暇のつらさは消えました。そして何より、部署の仕事を全体で見る癖がつき、どこで仕事が詰まっているか——ボトルネックがどこにあるかが見えるようになりました。振られるのを待っていたら、この視点は手に入らなかったと思います。
書き出すものは、この3つの引き出しから探す
「リストアップしろと言われても、書くことが思いつかない」——止まるとしたら、たいていここです。探す場所を3つに分けておきます。
引き出し① 自分の中に、後回しのまま残っているもの
書類の整理、データの更新、読みかけの資料。「時間ができたらやろう」と思ったまま流れていったものが、たいてい何個かあります。忙しくて手をつけられなかったという理由だけで残っているので、暇な今が本来のタイミングです。
引き出し② 他人宛のやり取りの中に、まだ誰も動いていない仕事がある
いちばん見落とされるのがここです。私がやっていたのは、営業から上司へ「この資料を作ってほしい」と依頼が飛んだメールのCCに自分が入っていたとき、上司から正式に振られるのを待たずに、その資料を作り始めることでした。
これで縮んだのは、自分の暇な時間だけではありません。依頼が出てから資料が相手に届くまでの時間——リードタイムそのものが短くなりました。依頼は、届いた瞬間から誰かが着手するまで止まっています。手が空いている人がその待ち時間を埋めれば、全体が早く回る。暇な人がいることは、チームにとってはむしろ使いどころなのです。
ただし、さきほど書いたとおり動くときは必ず一言伝えるのがセットです。黙って進めると「勝手にやった」になり、先に伝えておけば「先に動いてくれた」になります。同じ行動でも、受け取られ方が変わります。
引き出し③ まだ誰の担当でもない仕事
手順書、業務の改善案、共有用のまとめ。誰かの担当ではないから、忙しい人からは永久に手が出ません。裏を返すと、着手した人がそのまま「その領域に詳しい人」になれるということです。暇な時期に作ったものが、忙しくなってから効いてきます。
「何をしてればいいんだろう」がなくなる
——今までのあなた
朝、席に着いてメールを確認したら、もうやることがない。
「(今日も長いな……。何をしてればいいんだろう)」
周りのキーボードの音だけが響く中で、忙しそうな同僚に声もかけられない。
「(『暇です』なんて言えないよな……。でも、このままでいいのか?)」
時計を見るたびに、置いていかれる焦りだけが積もっていく。
——「今できること」を書き出した、これからのあなた
朝、席に着いたら、昨日書き出したリストを開く。
「(今日は手順書の続きと、あの問い合わせの下調べをやろう)」
やることが決まっているだけで、時間の流れ方が変わる。
「今、〇〇に取り組んでいます」と上司に一言伝えると、「助かる、それ頼む」と返ってくる。
暇な時期に手に入れた時間の使い方と視点は、忙しくなったときに武器になります。
「(あの暇な時期があったから、今があるな)」
そう思える日が、きっと来ます。
暇なのは、必要とされていないからではない
周りが忙しいのに自分だけ暇なのは、あなたの能力の問題でも、必要とされていないわけでもありません。
今日、5分だけ時間を作ってこれをやってみてください。
「後回しにしていたこと・学べること・作れるもの」を紙に書き出す。
それだけで、待つだけだった一日が動き始めます。
参考文献
- Harju, L., Hakanen, J. J., & Schaufeli, W. B. (2014). Job boredom and its correlates in 87 Finnish organizations. Journal of Occupational and Environmental Medicine, 56(9), 911–918. https://doi.org/10.1097/JOM.0000000000000248
- Stock, R. M. (2014). Is boreout a threat to frontline employees’ innovative work behavior? Journal of Product Innovation Management, 32(4), 574–592. https://doi.org/10.1111/jpim.12239
- Wrzesniewski, A., & Dutton, J. E. (2001). Crafting a job: Revisioning employees as active crafters of their work. Academy of Management Review, 26(2), 179–201. https://doi.org/10.2307/259118
- Locke, E. A., & Latham, G. P. (2002). Building a practically useful theory of goal setting and task motivation: A 35-year odyssey. American Psychologist, 57(9), 705–717. https://doi.org/10.1037/0003-066X.57.9.705
- Frese, M., & Fay, D. (2001). Personal initiative: An active performance concept for work in the 21st century. Research in Organizational Behavior, 23, 133–187. https://doi.org/10.1016/S0191-3085(01)23005-6

