仕事の目的が見えないときの対処法|意味がないのではなく、言葉にされていないだけ

メンタル・気持ちの整え方

「この仕事の目的は?」

言われた通りに手を動かしながら、ふとそんな疑問が浮かぶ。「何のためにやるの?」と考え始めると、目の前の作業がただの作業にしか見えなくなってくる。「この仕事、意味ある?」——そう思いながら続ける時間は、実際の労力以上に重く感じられる。

目的が見えないまま淡々と作業をこなすのは、行き先を知らされないまま歩かされているようなものだ。真面目に取り組んでいる人ほど、「意味が分からないまま」を放置できず、静かに消耗していく。

私にもその時間があった。資料や図面の整理を任されていた時期のことだ。何のための整理なのか、目的がわからない。目的がわからないから、何が重要なのかもわからない。どこを丁寧にやるべきで、どこは手を抜いていいのか、判断のしようがない。だから、工夫のしようもなかった。ただ言われた通りに、手だけを動かしていた。

「意味なんて聞いても、『とにかくやって』としか言われなさそう」——そう思うかもしれない。でも、意味は誰かに教えてもらうものとは限らない。自分で見つけることもできる。

目の前の作業を「3つの問い」で言語化してみる

やることはシンプルだ。目の前の作業について、「①それをすると何が変わるのか ②誰のどんな困りごとが解決するのか ③やらなかったら何が起きるのか」の3点を、自分なりに考えてみる。

たとえば単純なデータ入力の作業でも、「このデータが整理されるから、後工程の人が探す手間なく使える」「これが遅れると、次の判断が止まる」と考えるだけで、同じ作業の見え方が変わってくる。それでも意味が見えないときは、依頼者に「この作業はどこにつながっていますか」と一言確認してみればいい。

「そんなことで本当に変わるの…」

そう思うかもしれません。でも、これには理由があります。

理由① 仕事の中身より、意味づけを変える方が効果がある

組織心理学者エイミー・レズネスキーらの研究に「ジョブ・クラフティング」という考え方がある。仕事の内容そのものを変えなくても、その仕事の意味づけを自分で変えるだけで、満足度やパフォーマンスが変わることが分かっている。

同じ清掃の仕事でも、「ただ掃除をしている」と捉える人と、「病院を清潔に保ち、患者の回復を支えている」と捉える人とでは、仕事への向き合い方がまったく違う。作業の中身は同じでも、意味づけは自分で選べる。

理由② 目的が分かれば、単調な作業にも耐えられる

精神科医ヴィクトール・フランクルは、ニーチェの言葉を引用してこう書いている。

「なぜ生きるかを知っている者は、ほとんどあらゆる『どのように』にも耐える」

これは仕事にもそのまま当てはまる。何のためにやっているかが分かっていれば、単調な作業や地味な工程も乗り越えられる。逆に、目的が見えないままでは、どんなに簡単な作業でも重く感じられてしまう。

理由③ 作業の先にいる「人」が見えると、取り組み方が変わる

心理学者アダム・グラントが行った研究では、大学の奨学金募集を行うコールセンタースタッフのうち、実際に奨学金を受けた学生と直接会って話を聞いたグループは、その後の成果が大幅に向上した。

自分の作業の先に、具体的な「誰か」が見えるようになったことで、電話をかけるという同じ作業への熱量が変わったのだ。目的を言語化する作業は、この「先にいる人」を自分の頭の中に描く作業でもある。

私の場合|目的がわかった瞬間、同じ作業が別物になった

その整理の仕事に意味を見つけたのは、だいぶ後になってからだった。整理した資料や図面が、あらゆる仕事の起点として使われていることに気づいたのだ。「整理は、すべての仕事の入り口だった」——そう気づいた瞬間から、同じ作業が別物になった。

何が重要かがわかるから、力の入れどころがわかる。使う人の姿が浮かぶから、工夫が生まれる。作業そのものがしやすくなっただけではない。整理の目的を言葉にできるようになったことで、この仕事を人に振りやすくなり、なぜこの整理が必要なのかを説明できるようになった。

目的が見えない作業は、創意工夫を奪う。逆に、意味を言葉にできた瞬間、同じ作業の中に工夫の余地が見えてくる。私の場合、その意味に自力で気づくまで長い時間がかかった。この記事の「3つの問い」は、あの遠回りをしないための近道だと思っている。

丁寧にやるか流すかを、自分で決められる

——今までのあなた

今日も同じ作業が続く。手は動いているのに、頭のどこかで同じ疑問が回っている。

「(この仕事、意味あるのかな……)」

丁寧にやるべきか、さっさと流すべきかもわからないから、ただ無難にこなすだけ。

「(何のために、これをやってるんだろう)」

終業時刻が来ても、達成感より徒労感の方が大きい。

——3つの問いで意味を言葉にした、これからのあなた

作業を始める前に、一度だけ自分に問いかける。

「(これが整うと、何が変わる? 誰が助かる? やらなかったら何が起きる?)」

答えが見えると、力の入れどころが見えてきます。

「(ここは後工程の人が使う部分だから丁寧に。ここは自分用だから7割でいい)」

同じ作業なのに、工夫の余地が見えてくる。やらされていた仕事が、自分で組み立てる仕事に変わっていく。

意味を待つ働き方から、意味を見つけにいく働き方へ。その変化は、日々の仕事の重さそのものを軽くしていきます。

意味がないのではなく、まだ言語化されていない

仕事の目的が見えないのは、その仕事に本当に意味がないからとは限りません。

多くの場合、意味がまだ言語化されていないだけです。「3つの問い」で自分なりに考えてみるだけで、同じ作業の見え方は大きく変わります。

次に「この仕事、意味ある?」と感じたときは、その疑問を放置せず、自分なりの答えを一度言葉にしてみてください。それだけで、目的の見えなかった仕事が、意味のある一歩に変わっていきます。

参考文献

  • Wrzesniewski, A., & Dutton, J. E. (2001). Crafting a job: Revisioning employees as active crafters of their work. Academy of Management Review, 26(2), 179–201. doi:10.5465/amr.2001.4378011
  • Grant, A. M., et al. (2007). Impact and the art of motivation maintenance. Organizational Behavior and Human Decision Processes, 103(1), 53–67. doi:10.1016/j.obhdp.2007.03.004
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