聞いてもいいのか迷うときの対処法|遠慮が、あとで自分を困らせる

上司・職場の人間関係

「あの、ちょっといいですか」と言いかけて、やっぱりこの程度のことを聞くのは申し訳ない気がして、言葉を飲み込んでしまう。そんな経験はありませんか。

私にもあります。相手が上司や目上の人だと、特にためらいました。一度聞いたはずの話の再確認や、「今さらこんな根本的なことを?」という確認は、どうしても切り出しにくいのです。そして聞かないまま自分の解釈で進めた結果、認識違いが発覚して、作業は手戻りになりました。

コミュニケーションを取りたい気持ちはあるのに、何を話題にすればいいのかわからない。「こんなこと聞いてもいいのかな」「しょうもないことだから聞き辛いな」「こんなことを聞いたら怒られそう」――そう考えているうちに、聞くタイミングそのものを逃してしまう。でも実は、聞いていいかどうかを判断する簡単な基準を持っておくだけで、「これなら聞いても大丈夫そう」と思えるようになります。今のうちに聞いておける自分に変わる方法を、この記事でお伝えします。

聞く前に自分に問いかける、たった二つの基準

聞いていいか迷ったときは、次の2点を自分に問いかけてみてください。

  • ①自分の仕事に関わる内容か
  • ②後で(自分か相手が)困る可能性がある内容か

どちらか一つでも当てはまれば、それは「聞いていい質問」です。あとは「今、少しだけいいですか」と一言添えるだけ。例えば「この資料の書式、このままで大丈夫か少しだけ確認したいのですが」のように、内容ではなく確認したいという姿勢を先に伝えると、相手も身構えずに答えやすくなります。

思っているほどには、見られていない

理由①:スポットライト効果

心理学に「スポットライト効果」という言葉があります。人は、自分の言動が実際以上に他人から注目され、評価されていると錯覚してしまう性質のことです。

「こんな初歩的なことを聞いたら、呆れられるかもしれない」と思っても、実際に相手がその質問を覚えているのは、こちらが想像するよりずっと短い時間です。例えば会議中に基本的な用語を聞き返しても、聞かれた本人は数分後にはもう次の話題に頭を切り替えています。自分の質問が相手の頭に居座り続けているという感覚は、たいてい思い込みにすぎません。

理由②:無知の知

古代ギリシャの哲学者ソクラテスは「無知の知」という考え方を残しました。自分が知らないということを自覚している人こそが、本当の意味で知恵のある人だ、という教えです。

知ったかぶりをして分からないまま進めるよりも、「分からない」と認めて聞ける人のほうが、結果的に正しい判断にたどり着きます。聞くことは恥ではなく、知恵の使い方そのものなのです。

理由③:時間対効果の逆転

小さな疑問を飲み込んだまま自己判断で進めると、後になって「実はやり方が違った」と分かり、一からやり直すことになりがちです。そうなると、最初に一言確認していれば数十秒で済んだはずのことに、相手はやり直しの説明や修正対応で何倍もの時間を取られてしまいます。

つまり、「相手の時間を奪いたくないから聞かない」という遠慮は、実際には逆効果になっていることが多いのです。小さな疑問を今のうちに聞いておくことは、遠慮ではなく、相手の時間を守る行動でもあります。

私の場合|一番聞きやすいのは、「依頼を受けたその場」だった

私がためらっていたのは、上司や目上の人への「再確認」や「根本的な確認」でした。聞けば数十秒で済むとわかっていても、相手が目上だと、その数十秒が重いのです。

そんな私が変われたのは、あることに気づいたからです。確認には、一番聞きやすいタイミングがある。それは、依頼を受けた・話を聞いた、まさにその場です。

その場なら、話題はまだ相手の頭の中にあります。質問は「話の続き」として自然に聞けます。ところが時間が経つと、同じ質問が「今さらの確認」に変わってしまう。聞きづらさの正体は質問の中身ではなく、タイミングの鮮度だったのです。

だから私は、疑問が浮かんだら、その場で確認するようにしました。結果、認識違いのまま進めることがなくなり、手戻りが減りました

この記事の2つの基準で「聞いていい質問だ」と判断したら、いつ聞くかは迷わなくていい。その場です。後になるほど、同じ質問は聞きにくくなっていきます。

「今さら聞いたら」で手が止まらなくなる

想像してみてください。

今のあなたは、依頼を受けて席に戻ってから、手が止まっています。

「これって、〇〇の意味だよな……たぶん」

確認したい。でも、さっき説明を受けたばかりです。

「今さら聞いたら、話を聞いてなかったと思われるかな……」

結局そのまま進めて、数日後、上司の一言で青ざめます。

「あれ? これ、頼んだのと違うな」

やり直しの時間は、あの数十秒の確認の何倍にもなりました。

でも、その場で聞けるようになったあなたは、違います。

依頼を受けたら、話の流れのまま確認します。

「今、少しだけいいですか。これは〇〇という理解で合っていますか?」

「あ、そうそう。ついでに言うと△△も気をつけて」

かかった時間は数十秒。おまけの情報までもらえて、手戻りはゼロです。

小さな疑問をその都度クリアにしながら進められるようになれば、周りからも「確認が早い人」として信頼されるようになるでしょう。聞くことへの気後れが薄れ、必要なタイミングで自然に声をかけられる自分に、少しずつ変わっていきます。

遠慮が、あとで自分を困らせる

聞いてもいいのか迷ったときは、「①自分の仕事に関わる内容か ②後で困る可能性があるか」の2点で判断してみてください。どちらかに当てはまれば、それは聞いていい質問です。遠慮は、時に相手の時間をより多く奪ってしまう。そのことを知っているだけで、一歩を踏み出しやすくなります。

参考文献

  • Gilovich, T., Medvec, V. H., & Savitsky, K. (2000). The spotlight effect in social judgment. Journal of Personality and Social Psychology, 78(2), 211–222. doi:10.1037/0022-3514.78.2.211
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