質問しても欲しい回答が来ないときの対処法|相手の負担を減らす聞き方が、自分も助ける

仕事の進め方・タスク管理

「さっきの質問、ちゃんと伝わったかな」と思ったのに、返ってきた回答が求めていたものと違う。もう一度聞き直すのも気まずいし、かといって自分で調べて進めると後で「なんで聞かなかったの」と言われそうで動けない。そんな経験はありませんか。

私にもあります。エンジニアに仕様について質問したら、正直に言って、ちんぷんかんぷんな回答が返ってきたのです。しかも、前提条件はきちんと伝えていました。「この資料はいつできますか」と聞いたのに、返ってきたのは関係のない内容の説明。欲しかったのは日付ひとつなのに、その日付だけがどこにも書かれていませんでした。

上司や先輩に質問しても、欲しい情報とは違う答えが返ってきたり、斜め上の回答をされてしまったりすると、「自分の聞き方が悪いのかな」と不安になりますよね。同じことを聞き直すのは気まずいし、「もう自分で調べたほうが早いかも」と諦めたくなる気持ちもわかります。でも実は、質問の仕方をほんの少し変えるだけで、一度で欲しい答えが返ってくるようになります。「それならできそう」と思える具体的な方法を、この記事でお伝えします。

困りごと・仮説・欲しい形の3点で聞く

質問するときは、次の3点をセットで伝えてみてください。

  • ①何について困っているか
  • ②自分はどこまで考えたか(仮説)
  • ③どんな形で答えがほしいか

例えば「A社の見積もり、どう進めればいいですか?」ではなく、「A社の見積もりについてです。前回と同じ条件で出そうと思っていますが(仮説)、金額だけ確認したいので、OKかNGかだけ教えてください(欲しい形)」と伝える。これだけで、相手が受け取る情報量がまったく変わります。

聞く側は、自分の前提を説明し忘れる

理由①:知識の呪い

心理学に「知識の呪い」という言葉があります。人は自分が知っていることを、相手も同じように知っている前提で話してしまう性質のことです。質問する側は自分の状況や背景を当然わかった上で聞いているつもりでも、相手にはその前提が見えていません。

例えば「あの件、どうなってますか?」とだけ聞くと、自分の頭の中には「先週依頼したA社の見積もり」がはっきり浮かんでいても、相手には「あの件」がどの案件を指すのか分かりません。結果、相手は自分の記憶に近い別件を想像して答えてしまい、話がかみ合わなくなるのです。だからこそ、自分の仮説や状況を言葉にして渡すことが、答えのズレを防ぐ一番の近道になります。

理由②:正しい問いを立てる

アインシュタインはこんな言葉を残したと言われています。「もし1時間で問題を解決しなければならないとしたら、最初の55分を正しい問いを見つけることに使うだろう」。良い答えは、良い質問からしか生まれません。

「これ、どうしたらいいですか?」という漠然とした質問は、相手にとって「何を」「どこまで」考えればいいのかが見えず、結局「とりあえずこうしたら?」という当たり障りのない答えしか引き出せません。一方で「A案とB案で迷っていて、コスト面ではA案が有利だと思うのですが、どちらで進めるべきですか?」のように問いを絞り込むと、相手は具体的な判断をするだけで済み、的確な答えが返ってきます。漠然とした質問には漠然とした答えしか返ってこないのです。

理由③:認知負荷を減らす

自分の仮説を示すと、相手は「何もないところから考える」のではなく「合っているかどうかを判断する」だけで済みます。ゼロから答えを組み立てるのと、一つの案に○×をつけるのとでは、相手にかかる負担がまったく違います。

会議中に急に「これ、どう思いますか?」と聞かれても、相手はその場で一から考える必要があり、つい「うーん、後で考えます」と先延ばしにされがちです。しかし「私はこう考えているのですが、この方向で合っていますか?」と仮説とセットで聞かれれば、相手は「合っている/ズレている」を判断するだけで即答しやすくなります。負担が軽い質問ほど、早く・的確な回答が返ってきやすくなるのです。

私の場合|前提を伝えるだけでは、足りなかった

私の質問は、決して雑ではありませんでした。前提条件は伝えていたのです。それでも、回答はズレました。

振り返るとわかります。私が渡せていたのは3点のうち「①何について」だけで、「③どんな形で答えがほしいか」を渡していなかったのです。欲しい形を指定されていない相手は、答えるべきことを自分の視点で選びます。エンジニアなら、技術的な状況の説明になる。こちらが欲しいのは「いつ」の一語なのに、です。

そこで、この記事の3点セットで聞くようにしました。何についてかを示し、自分の想定を添えて、「完成予定日だけ教えてください」と欲しい形まで指定する。

変化ははっきり出ました。やり取りの回数が減ったのです。今まで二往復も三往復もしていた確認が、一往復で終わる。質問は、前提を丁寧にするだけでは足りません。「どう答えてほしいか」まで渡して、初めて一度で伝わるのだと実感しました。

「……で、結局いつ?」が消える

想像してみてください。

今のあなたは、返ってきた回答の前で固まっています。

「この資料、いつごろできますか?」

そう聞いたはずなのに、返信に並んでいるのは長い状況説明。肝心の日付はどこにもありません。

「……で、結局いつできるんだろう」

聞き直すのも気まずくて、メッセージを打っては消し、打っては消し。

でも、3点セットで聞けるようになったあなたは、違います。

「〇〇の資料の件です。来週の報告で使うので、△日までにいただけると想定しています。完成予定日だけ教えてください」

返ってくるのは、短い一行です。

「その想定で大丈夫です。△日までにお送りします」

一往復で終わり。聞き直す気まずさも、待っている間のモヤモヤもありません。やがて周りから「あの人は話が早い」と言われるようになり、質問することへの気後れそのものが消えていきます。わからないことをその都度クリアにしながら、仕事を前に進められる自分に変わっていきます。

相手の負担を減らす聞き方は、自分の負担も減らす

質問しても欲しい回答が来ないときは、聞き方に「①何について ②自分の仮説 ③欲しい形」の3点を添えるだけで、驚くほど答えが変わります。相手の負担を減らす聞き方は、あなた自身の負担を減らすことにもつながります。今日の質問から、ぜひ試してみてください。

参考文献

  • Camerer, C., Loewenstein, G., & Weber, M. (1989). The curse of knowledge in economic settings. Journal of Political Economy, 97(5), 1232–1254. doi:10.1086/261651
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