納期が遅れそうなときの対処法|全部そろってから出さない

仕事の進め方・タスク管理

カレンダーを見る。期日まで、あと3日。

手元の資料は、まだ半分も終わっていない。

(……このままだと、間に合わない)

でも、あなたは黙って手を動かし続ける。だって、途中のものを出したって仕方がない。資料というのは、全部そろってから出すものだから。

そうして期日の朝、あなたは頭を下げることになる。

「すみません、もう少しだけ時間をください」

相手は言う。「え、今言われても……」

——あのとき本当に必要だったのは、あと3日ではありません。先に、出せるものを出しておくことでした。

解決策:「優先度の高い項目から先に出します。残りは○日までに」と自分から提案する

全部そろうのを待たない。終わった項目だけを、期日どおりに届ける。

そして残りは、いつ出すかをセットで伝える。

「まず優先度の高い項目を金曜に出します。残りは来週の水曜までにお渡しできます」

これだけです。納期を延ばしてもらうのでもなく、徹夜で全部やるのでもない。届ける順番を変えるという、三つ目のやり方があります。

なお、前回の記事で紹介した「作業範囲を削る」とは別の方法です。あちらは要らない項目を落として終わり。今回は全部届けるけれど、届けるタイミングを分ける。残せるものは残したいときは、こちらが使えます。

なぜ、分けて出したほうが信頼されるのか

理由①:完璧を待つほど、何も届かなくなる

フランスの思想家ヴォルテールは、こう書き残しています。

最善は善の敵である

100点の資料を目指して抱え込んだ結果、期日に0点のものしか出せない。これが、いちばん多い失敗の形です。

70点でも、期日に手元にあるほうが相手は助かる。「完璧なものを出したい」は、多くの場合こちらの都合であって、相手が求めているものとは限りません。

理由②:相手が困るのは「遅れること」より「何も出てこないこと」

依頼した人は、あなたの資料を受け取ってから何かをします。目を通す、判断する、上に上げる、次の人に渡す。

だから期日に何も届かないと、その先の予定が全部止まります。相手が焦るのは、あなたを責めたいからではなく、自分の段取りが崩れるからです。

逆に、半分でも届いていればどうでしょう。相手はそこまでを確認できる。判断も進められる。「残りは水曜」と分かっていれば、その前提で予定も組める。

同じ「全部そろうのは水曜」でも、何も出さずに水曜を迎えるのと、金曜に半分渡してあるのとでは、相手の受け止め方はまったく違います。

理由③:早く出すほど、認識のズレが早く見つかる

ソフトウェア開発の世界では、完成まで作り込んでから見せるのではなく、動くものを小さく作って何度も見せる進め方が主流になりました。理由はシンプルで、そのほうが手戻りが少ないからです。

資料も同じです。全部作りきってから「思っていたのと違う」と言われたら、丸ごと作り直しになる。でも最初の項目を出した時点で方向がずれていると分かれば、直すのは一部で済みます。

先に出すのは、期日を守るためだけではありません。あなたの作業を守るためでもあります。

期日の朝に、頭を下げなくてよくなる

——今までのあなた。

(このままだと、間に合わない)

そう気づいていながら、誰にも言えない。途中のものを見せるのは中途半端だと思うから、期日の直前まで一人で抱え込む。そして朝いちばんに、頭を下げる。

「すみません、もう少しだけ……」

——自分から分けて提案できるようになった、これからのあなた。

期日の3日前。終わらないと分かった時点で、あなたは席を立つ。

「この資料なんですが、全項目を金曜までにそろえるのが難しそうです」

「あ、そうなんだ」

「優先度の高い前半を金曜にお出しして、残りは来週の水曜まででいかがでしょうか」

「うん、それで大丈夫」

金曜、あなたは約束したぶんを渡している。頭は下げていない。相手はその場で目を通し、次の段取りに進んでいく。

私の場合|自分から「分けて出します」と提案したら、すんなり通った

少し、私自身の話をさせてください。

私も以前は、資料は「全部そろってから出すもの」だと思い込んでいました。

あるとき、どう考えても納期に間に合わない資料がありました。そこで資料を項目ごとに分け、どれが優先なのかを確認したうえで、自分から「優先度の高いものから先に出します」と提案してみたのです。

返ってきたのは、拍子抜けするような一言でした。

「それで大丈夫」

すんなり通りました。優先度の高い項目から仕上げて渡し、残りはあとから作って追加で提出しています。

正直に書くと、残り全部がきれいに納期内に収まったわけではありません。 期限内に出せたものもあれば、別のタスクを優先して後ろに回ったものもあります。

それでも困ったことにはなりませんでした。先に「いつ、何を出すか」を共有してあったからです。順番が見えていれば、多少後ろにずれても、相手は待てるのだと知りました。

(でも、途中のものを出すのは中途半端で、失礼なんじゃ……)

そう感じる気持ちは、よく分かります。私もずっとそう思っていました。

でも、相手にとって失礼なのは、未完成の資料が届くことではありません。期日の朝まで、何も分からないままにされることです。

先に出す。それだけで、「間に合わなかった人」から「段取りを共有してくれる人」に変わります。

抱え込む前に、順番を提案する

納期が危ないと気づいたとき、選択肢は「徹夜で全部やる」か「遅れて謝る」の二つだけに見えます。

でも、もう一つあります。分けて出すことです。

全部そろうのを待たなくていい。出せるものから出して、残りの予定を一緒に伝える。

「優先度の高い項目から先に出します。残りは○日までに」

その提案ができた日から、納期はあなたを追い詰めるものではなくなります。

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