何を期待されているかわからない仕事を任されたときの対処法|受けたその場で、位置づけを聞く

仕事の進め方・タスク管理

「ただの雑用じゃない?」

頼まれた仕事に手をつけながら、ふとそんな言葉が頭をよぎる。「この仕事、なぜ私?後輩でも良くない?」と考え始めると、目の前の作業がどんどん軽く見えてくる。「もっと適切な人がいるんじゃない?」——そう思うと、手を動かす意味そのものが分からなくなってくる。

期待されている水準も、この仕事がどこにつながっているのかも分からないまま進めるのは、地図のない場所を歩かされているようなものだ。真面目な人ほど、「分からないまま」を悪いことのように感じて、余計に苦しくなる。

私にも覚えがある。若手の頃、資料や図面の整理を任された。「なぜ自分がこれを?」と、正直思った。ただの片付けにしか見えなかったからだ。

「そんなこと聞いたら、逆に『何を今さら』と思われそう」——そう思うかもしれない。でも、期待そのものを教えてもらうのではなく、自分の理解を一言確認するだけなら、今日からできる。

仕事を受けたその場で「位置づけ」を一言確認する

やることはシンプルだ。仕事を受けたら、「①この仕事はどこにつながるのか ②期待されているゴールや水準 ③なぜ自分に任せるのか」の3点を、自分なりに推測した上で一言確認する。

たとえば「これは〇〇のための資料という理解で合っていますか」「まずはたたき台レベルで大丈夫ですか」と聞くだけでいい。答えを丸ごと聞き出そうとしなくていい。自分の理解を言葉にして、ズレがないか確かめるだけで十分だ。

「本当にそれだけでいいの…」

そう思うかもしれません。でも、これには理由があります。

理由① 位置づけが見えると、同じ作業でもやる気が変わる

心理学には「期待理論」と呼ばれる考え方がある。人は、自分の行動が成果につながり、その成果に価値があると実感できたときに動機づけられる、というものだ。

逆に言えば、その仕事が何につながるのか分からないままでは、どれだけ丁寧にやっても「やらされている」感覚から抜け出せない。「ただの雑用」に見えてしまうのは、能力や適性の問題ではなく、位置づけが見えていないことがほとんどの原因だ。一言確認して位置づけが分かるだけで、同じ作業への向き合い方はまったく変わってくる。

理由② 貢献先が見えると、視野が仕事全体に広がる

経営学者ピーター・ドラッカーはこう言っている。

「貢献に焦点を合わせよ。そうすれば、視野は目の前の仕事から目標全体へと広がる」

目の前の作業だけを見ていると、「なぜ自分がこれを」という疑問から抜け出せない。しかし、その作業が誰の・どんな目標に貢献しているのかが見えると、単なる作業が「自分の役割」に変わる。位置づけを確認することは、視野を広げるための最初の一歩だ。

理由③ 「なぜ自分か」を確認しないと、勝手に誤解が生まれる

「なぜ自分にこの仕事が回ってきたのか」を確認しないまま進めると、多くの人は無意識に「都合のいい人だから」「暇そうに見えるから」といった、自分を下げる理由で納得しようとしてしまう。

しかし実際には、依頼する側には別の理由があることが多い。「丁寧に仕上げてくれると信頼しているから」「次のステップとして経験してほしいから」「スケジュール的にあなたしか動けるタイミングがないから」——理由を確認しないままでは、こうした本当の理由に気づく機会そのものを失ってしまう。

「なぜ私が」のまま手を動かさなくなる

——今までのあなた。

「なぜ私が」と思いながら、手だけを動かしている。作業は進むのに、気持ちは置き去りのまま。夕方、今日やったことを振り返って、「自分は何をしているんだろう」とため息が出る。

——一言確認するようになった、これからのあなた。

「これは〇〇のための準備という理解で合っていますか」

「そう。それがないと次が始まらないから、助かるよ」

任された瞬間に、仕事の位置づけが見えます。同じ作業なのに、向き合い方がまるで違ってきます。

私の場合は、恥ずかしながら、確認しないまま進めていました。任された資料や図面の整理は、最初、ただの片付けにしか見えなかった。それでも続けるうちに気づきます。現場の資料や図面はぐちゃぐちゃになっていることが多く、整理されていなければ、必要なものが探せず、そもそも仕事が始まらない。あの整理は、すべての仕事の入り口を作る作業だったのです。

意味が分かってからは、同じ整理がまったく違う仕事に見えました。ただ、そこにたどり着くまでに、ずいぶん時間がかかった。最初に一言確認していれば、「やらされ感」を抱えた日々は、もっと短くて済んだはずです。

「やらされている」働き方から、「任されている」働き方へ。一言の確認は、その一番の近道です。

期待や理由が、言葉にされていないだけ

何を期待されているか分からない仕事を任されるのは、あなたが軽く見られているからではありません。

多くの場合、期待や理由が言葉にされていないだけです。位置づけを一言確認するだけで、その仕事の見え方は大きく変わります。

次に仕事を任されたとき、まずは自分なりの理解を一言、確かめてみてください。それだけで、「なぜ自分が」という疑問は、「自分だからこそ」という納得に変わっていきます。

参考文献

  • Vroom, V. H. (1964). Work and Motivation. Wiley.
  • Drucker, P. F. (1966). The Effective Executive. Harper & Row.(邦訳『プロフェッショナルの条件』ダイヤモンド社)
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