「この会社、10年後もあるんだろうか」
業界のニュースを見るたび、ふと不安がよぎる。AIに仕事を奪われるという記事、縮小していく市場、変わらない社内のやり方。「このままここにいていいのか」と。
その不安、社内の人に話してみたことはありますか。おそらく返ってくるのは「まあ、うちはこうだから」「考えても仕方ないよ」。そして、知ってほしいことがあります。将来性の不安は、社内では絶対に解消できません。周りも全員、同じ船に乗っているからです。船の中で「この船、沈まないかな」と聞き合っても、答えは出ない。海の様子は、船の外からしか見えないのです。
私自身、その不安の中にいた時期があります。そして振り返ると、救ってくれたのは社内の誰かではなく、社外の友人との何気ない飲み会でした。
解決策:社外の人と話す「窓」を1つだけ作る
やることは1つ。社外の人と定期的に話す機会を、1つだけ作ることです。
「人脈作り」のような大げさな話ではありません。ハードルの低い順に、たとえばこんな形があります。
- 昔の同期や学生時代の友人と、月1回ご飯に行く
- オンラインの勉強会やセミナーに参加してみる
- 業界の社外コミュニティに入ってみる
一番のおすすめは、最初のものです。「社外の知り合いなんていない」と思った人も、記憶をたどれば、別の会社で働く友人の1人や2人はいるはず。気負った異業種交流ではなく、「外の世界の定点観測の窓を1つ持つ」くらいの感覚で十分です。
私の場合|ただの飲み会が、外の世界への「窓」だった
私は、友人や昔の同僚と飲みに行く場を、意識して定期的に作っていました。頻度は月1回のときもあれば、半年に1回のときもある。「人脈作り」なんて意識は一切なく、ただの飲み会です。
でも、その場で気づいたことが2つあります。
1つ目は、みんな同じことで悩んでいるということ。会社も業界も違うのに、出てくる話は「上司に相談しづらい」「仕事が回らない」「将来が見えない」——自分と同じ悩みばかり。「悩んでいるのは自分だけじゃない」とわかるだけで、気持ちはずいぶん楽になりました。
2つ目は、「できる・できない」は人それぞれだということ。自分が当たり前にやっていることを、相手は「すごいな」と言う。逆に、相手が当たり前にできることが、自分にはできない。それなら、得意なことをやって、苦手なことはお願いする——それをお互いにやれば、仕事はもっと良くなるはずです。この感覚は、自分の武器を考えるときの土台にもなりました。
社外に窓が1つあるだけで、見え方が変わる
理由①:価値ある情報は「緩いつながり」からやってくる(弱い紐帯の強み)
社会学者マーク・グラノヴェッターの有名な研究があります。転職者がどこから仕事の情報を得たかを調べたところ、多くは家族や親友ではなく、「たまにしか会わない緩い知り合い」からでした。
毎日会う人はあなたと同じ情報圏に住んでいます。違う世界の情報は、違う世界に住む人からしか入ってこない。月1回のご飯は、その情報の通り道になります。
理由②:井の中の蛙、大海を知らず
昔から言われてきたことわざの通りです。会社という井戸の中にいる限り、外の海がどれほど広いかも、自分の泳ぎがそこで通用するのかもわかりません。
でも、このことわざには続きがあるのをご存じでしょうか。「されど空の深さを知る」。井戸の中にいたからこそ深く知っていることが、あなたには必ずあります。外と話すことは、それに気づくことでもあるのです。
理由③:相場観は「比較」からしか生まれない
自分の市場価値も、会社の立ち位置も、業界の先行きも、すべて「比較」でしか測れません。
社内にいるだけでは比較対象がゼロ。つまり、将来性の不安の正体は「情報不足」です。外の人と話せば、「あの業界ではこれが当たり前らしい」「自分のやってきたことは意外と珍しいらしい」という比較の材料が集まり、不安は少しずつ「判断」に変わっていきます。
同じ船に乗った同僚以外に、話せる相手ができる
——今までのあなた
業界のニュースを見ては、ため息をつく。
「(この会社にいて、大丈夫なのかな……)」
不安を話せる相手は、同じ船に乗った同僚だけ。答えの出ない問いが、頭の中を回り続ける。
——窓を1つ持てた、これからのあなた
月1回のご飯を続けて、数ヶ月後。友人の何気ない一言に、あなたはハッとします。
「え、そんな管理までやってるの?うちの会社なら専門の担当がいるよ」
自分では当たり前だと思っていた仕事が、外では武器になると知る。逆に「今のうちにこれは学んでおいたほうがいいな」と、足りないものも具体的に見えてくる。
私自身、外の友人と話すたびに気持ちが楽になり、少しずつ「自分は外でも、実はやれるんじゃないか」という自信がついていきました。どちらに転んでも、あなたの不安はもう「漠然とした恐怖」ではありません。動くための材料がそろった、「動ける不安」に変わっています。
船の外に、窓を1つ
今の仕事の将来性への不安は、考え続けても消えません。船の中には答えがないからです。
今週、久しく会っていない社外の友人1人に、メッセージを送ってみてください。「久しぶり、近々ご飯でもどう?」——その一通が、外の世界への窓になります。窓が1つあるだけで、見える景色はまったく変わります。
参考文献
- Granovetter, M. S. (1973). The strength of weak ties. American Journal of Sociology, 78(6), 1360–1380. doi:10.1086/225469

