仕事、このままでいいのか|原因は思い出せない。来た瞬間に1行残す

仕事、このままでいいのか|原因は思い出せない。来た瞬間に1行残す メンタル・気持ちの整え方

※本記事にはプロモーションが含まれます。

「このまま歳だけとっていくのかな」

「同期はどんどん成長している気がする」

「5年後、自分はどうなってるんだろう」

毎日仕事はこなしている。それなのに、ふとした瞬間に胸がざわつく。日曜の夜。同期の異動を聞いた日。SNSを閉じたあと。

そこで、あなたは検索します。「仕事 このままでいいのか」と。出てきた記事には、たいてい同じことが書いてあります。不安の原因を書き出しましょう。何がモヤモヤするのか、紙に書いて整理しましょう。

やってみた人もいると思います。そして、こうなったはずです。書いてみたけれど、たいしたことは出てこなかった。それでもその日は少し落ち着いて、腑に落ちた気がして、寝る。

——そして2週間後、また同じ言葉で検索している。

何度も戻ってくるのは、あなたが決められない人間だからではありません。思い出そうとしているからです。

書き出しても出てこないのは、思い出そうとしているから

「なぜモヤモヤするのか」を、机の前に座って思い出そうとする。これが、うまくいかない方法です。

そこで、やり方を1つだけ変えてください。

「このままでいいのか」と思った瞬間に、スマホのメモへ1行だけ残す。

  • いつだったか(日付と、だいたいの時刻)
  • その直前に、何があったか

それだけです。考えない。判断しない。解決しない。「なぜ不安なのか」も書かなくて構いません。むしろ書かないでください。

たとえば、こんな1行です。

  • 9/9 23:10/同期が異動になったと聞いた
  • 9/14 21:40/転職サイトを開いて、閉じた
  • 9/21 08:05/月曜の朝、席についた瞬間

3回たまったら、読み返す。やることはこれで全部です。

なぜ、座って考えても原因が出てこないのか

「思い出して書き出す」がうまくいかないのには、理由が3つあります。どれもあなたの能力の話ではありません。

理由①:思い出した気持ちは、経験ではなく「自分についての思い込み」でできている

心理学者のロビンソンとクロアは、人が自分の感情を報告するしくみを整理しました。その日その場の感情は、実際に感じたものを答えられます。ところが、「あのとき、なぜそう感じたのか」を後から答えようとすると、人は実際の経験にアクセスできなくなり、代わりに「自分はこういう人間だ」という信念で穴を埋めてしまうといいます。

だから、机の前で「なぜ自分はモヤモヤするのか」を思い出そうとすると、出てくるのはこういう言葉になります。

  • 「自分は優柔不断だから」
  • 「贅沢な悩みなんだと思う」
  • 「たぶん、やりたいことがないからだ」

これは原因ではありません。自己評価です。自己評価をいくら書き出しても、打つ手は出てきません。手が出せないから、また戻ってくる。

書いても出てこなかったのは、あなたの内省が浅いからではありませんでした。思い出すという方法そのものが、この用途に向いていなかったのです。

理由②:「自分について考える」には、効くものと長引かせるものがある

同じ「自分について考える」でも、中身は1つではありません。トラップネルとキャンベルは、自分に向ける意識を反芻(はんすう)と内省の2つに分けました。反芻は、うまくいかないことを繰り返し思い返す考え方。内省は、興味や関心から自分を眺める考え方です。2つは似て見えて、心の状態への影響がはっきり違います。

ノーレン・ホークセマらのまとめによれば、反芻は気持ちの落ち込みを長引かせる方向に働きます。

ここが厄介なところです。「原因を書き出す」は、そのつもりがなくても反芻になりやすい。答えの出ない問いを、机の前で何度も回すことになるからです。だから、書いた直後は少しすっきりして、しばらくすると前より重くなって戻ってくる。

その場で1行だけ残す方法は、ここを避けます。その場に留まる時間が数秒しかないので、回しようがないのです。

理由③:だから研究の世界では、思い出さずに「その場で」記録する

同じ壁に、研究者もぶつかってきました。人の気持ちを調べたいのに、あとから聞くと本当のところが分からなくなる。そこで採られたのが、思い出させないという方法です。

カーネマンらは、一日をまとめて振り返るのではなく、場面ごとに区切って記録する方法を作りました。シフマンらが整理した経験サンプリングは、さらに踏み込んで、その場・その瞬間に記録します。記憶に頼らないことが目的だからです。

あなたのモヤモヤも同じです。あとから思い出せないなら、起きたそばから捕まえるしかありません。スマホのメモ1枚あれば、それはもうできます。

やること|来た瞬間に、1行だけ

書くものは、2つだけです。

  • いつ:日付と時刻。メモアプリが自動で残してくれるなら、それで十分です
  • 直前に何があったか:見たもの、聞いたこと、会った人。事実だけ

書かなくていいものも、はっきりさせておきます。

  • ❌ なぜ不安になったのか(それが分からないから記録しています)
  • ❌ これからどうするか(判断は、材料が集まってからです)
  • ❌ 自分への評価(「情けない」は記録ではありません)

そして、3回たまったら読み返します。1回では何も見えません。2回でも足りません。3回並べると、たいていの人は同じことに気づきます。

——同じ種類のことが、引き金になっている。

もし「引き金」がうまく書けないときは、その瞬間に頭の中に浮かんでいた言葉を思い出してみてください。次の4つのどれかに、たいてい近いはずです。

  • 「自分には何もない気がする」
  • 「この会社、この業界で大丈夫なのか」
  • 「何かしなきゃ、なのに何もしていない」
  • 「そもそも、自分は何がしたいんだろう」

漠然としているように見えて、言葉にしてみると、意外とはっきりどれかに寄っています。

引き金が分かったら、打つ手が決まる

ここから先は、3回分のメモがたまってからの話です。引き金の種類によって、効く手が違います。4つとも読む必要はありません。自分のメモに出てきたものだけで十分です。

引き金が「他人と比べた直後」なら──1回だけ、棚卸しする

これまで担当した仕事を10個書き出し、それぞれを「〜ができる」の形に言い換える。「新人の質問に答えていた」は「人に説明ができる」です。終わりは、紙が1枚できたとき。

バンデューラは、「自分はやれる」という感覚の最大の源泉が過去の達成経験であることを示しました。ただし、経験は思い出せる形になっていないと力を持ちません。棚卸しは、それを引き出せる形にする作業です。

引き金が「会社や業界のニュース」なら──社外に、窓を1つ作る

昔の同期や学生時代の友人と、ご飯に行く。人脈作りではなく、外の定点観測です。終わりは、1人と話せたとき。

この不安は、社内では解消できません。周りも全員、同じ船に乗っているからです。グラノヴェッターは、転職者が仕事の情報を得ていたのは親友ではなくたまにしか会わない緩い知り合いからだったことを示しました。

引き金が「何もしていない自分に気づいた瞬間」なら──今月の1つだけ決める

気になっていた本を1冊。講座の動画を1本。ショートカットを10個。終わりは、今月末。完走しなくて構いません。

焦りの正体は将来ではなく「何もしていない今の自分」なので、情報を集めても消えません。フォッグは、行動が続くかどうかを決めるのはモチベーションの高さではなく行動の小ささだと結論づけました。

引き金が「先が見えないこと」なら──「嫌じゃないこと」を症状で書く

「なりたい姿」は後回しで構いません。「これは嫌だ」を3つ書く。終わりは、3つ書けたとき。

ただし、「嫌い」で止めず、症状まで下ろすのがコツです。「あの作業が嫌い」ではなく「ミスが漏れる/途中で飽きる/目が疲れる」。ここまで下ろすと、その裏返しが行き先になり、しかも今の職場で動かせます。

アイエンガーとレッパーのジャムの実験では、24種類を並べたときより6種類のときのほうが、実際に買った人の割合が高くなりました。ほぼ無限の選択肢である「将来」の前で思考が止まるのは、無理のない反応です。

「また戻ってきた」が、なくなる

——今までのあなた。

日曜の夜、胸がざわつく。検索して、記事を読んで、少し落ち着いて、寝る。

「(結局、自分が何に引っかかっているのか、分からないままだ)」

そして2週間後、また同じ言葉を打ち込んでいる。何度目かも、もう数えていない。

——3行のメモがたまった、これからのあなた。

ある日、あなたはメモを読み返して気づきます。

「(3回とも、人と比べた直後だ)」

原因を言葉で説明できるようになったわけではありません。それでも、どういうときに来るかは、もう言えます。不意打ちだったものが、引き金の分かっているものに変わる。そうなれば、打つ手は選べます。

私自身、上の4つはどれも他人事ではありませんでした。棚卸しで一番効いたのは、「できること」ではなく「できないこと」が紙の上ではっきりしたときでした。4つとも通ってみて、共通していたのは1つです。どれも、頭の中だけで完結させなかった。紙に出す、人に会って話す、本から入れる。不安が育つのは、いつも自分の頭の中だけで考えているときでした。

今日やること

準備するものはありません。スマホのメモアプリを1つ、新規で開いておくだけです。

そして今日、「このままでいいのか」がまた来たら、そのとき1行だけ書いてください。

いつ。直前に、何があったか。それだけです。

今日は、それ以上何もしなくて構いません。考えるのは、3回たまってからです。

それでも、一人では読めないときは

ところで、「仕事 このままでいいのか」と一緒に検索されている言葉に、占いがあります。

これは笑うところではなくて、よく分かる話だと思っています。自分では決められないから、外から見てほしい。その気持ちが占いに向かうのは自然なことです。

ただ、外から見てもらうのが目的なら、その3行のメモを持って、無料のキャリア相談に行くほうが早いと思います。手ぶらで「なんとなくモヤモヤします」と言うのと、「この3回、全部こういう場面で来ています」と見せるのとでは、返ってくるものがまるで違います。

メモを持って、社外の人に読んでもらう

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急ぐ話ではありません。まずは3行、自分で貯めてからで十分です。

戻ってくるのは、決められないからではない

「このままでいいのか」が何度も戻ってくるのは、あなたが優柔不断だからでも、贅沢だからでもありません。思い出そうとしていたから、材料が集まらなかっただけです。

原因は、思い出せません。でも、来た瞬間なら捕まえられます。

今日その瞬間が来たら、1行だけ残してください。3回そろったとき、あなたのモヤモヤは初めて、形のあるものになります。

参考文献

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  • Trapnell, P. D., & Campbell, J. D. (1999). Private self-consciousness and the five-factor model of personality: Distinguishing rumination from reflection. Journal of Personality and Social Psychology, 76(2), 284–304. doi:10.1037/0022-3514.76.2.284
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