日曜日の憂鬱を軽くする金曜の習慣|仕事を、ひとつだけ残しておく

日曜日の憂鬱を軽くする金曜の習慣 メンタル・気持ちの整え方

日曜日の夕方。まだ何も始まっていないのに、気持ちだけが先に月曜へ引っ張られていく。

テレビの音が少し遠くに聞こえて、時計を見るたびに胸のあたりが重くなる。

「せっかくの休みなのに、後半はいつもこれだ」

この記事で渡したいものは、ひとつだけです。金曜日に、月曜の自分へ作業をひとつ残しておく。たったそれだけで、日曜の夜の重さは変わります。

日曜の夜に重くなるのは、月曜が嫌いだからではない

日曜の夜が憂鬱なとき、多くの人は原因を「仕事が嫌だから」だと考えます。でも、少し立ち止まってみてください。

月曜の朝、何をするかはっきり決まっている週。たとえば午前中にプレゼンがあるとか、朝いちで納品するものが手元にあるとか。そういう週の日曜の夜は、意外と気が重くなかったりしませんか。

逆に重いのは、月曜の朝がまっさらな週です。

「明日、何から手をつけるんだったかな」

この空白が、日曜の夜にじわじわ効いてきます。頭のどこかで仕事のことを考えているのに、考える材料がないので、ぐるぐる回るだけで終わる。そして「明日から一週間か」という漠然とした重さだけが残る。

つまり、日曜の夜を重くしているのは月曜の中身ではなく、月曜の輪郭がぼやけていることのほうなのです。

金曜に、月曜の自分へ「作業」をひとつ残しておく

やることは単純です。

金曜日、仕事を完璧に終わらせずに帰る。月曜にやる作業を、意図的にひとつだけ残しておく。

そうすると、日曜の夜に頭に浮かぶ言葉が変わります。

「明日、何をするんだっけ」から、「明日はあれを仕上げればいいんだな」へ。

ここで、こう思った方もいるはずです。

「仕事を残して帰るなんて、だらしないだけでは」
「かえって月曜が嫌になりそうだけど」

もっともな引っかかりだと思います。ただ、この方法が効くのには理由があって、それは「サボっていい」という話とはまったく別のところにあります。順番に見ていきます。

ストレスをつくるのは、悪い結果ではなく「わからなさ」

ロンドン大学の研究チームが2016年に発表した実験があります。参加者にゲーム形式の課題をやってもらいながら、ストレス反応(瞳孔の開き、発汗、ストレスホルモンなど)を測ったものです。

わかったのは、人のストレス反応の大きさを決めていたのは「悪いことが起きる確率」ではなく「どうなるか分からない度合い」だったということでした。悪い結果になるとはっきり分かっている状況より、良いか悪いか半々で読めない状況のほうが、強いストレス反応が出ていたのです。

これを日曜の夜に当てはめると、話がつながります。

月曜が憂鬱なのは、月曜が「確実に最悪の日」だからではありません。月曜が「読めない日」だからです。何が待っているか分からない状態のまま夜を迎えるので、気持ちが落ち着く場所を見つけられない。

だとすれば、手を打つべきは気分そのものではなく、読めなさのほうです。

やり残しが頭に居座るのは、中身が決まっていないとき

とはいえ「仕事を残す」と聞くと、やり残しが気になって余計しんどくなりそうな気もします。実際、終わっていないことが頭に居座り続ける現象は昔から知られています。

ただ、ここには続きがあります。2011年に発表された一連の実験で、興味深い結果が出ました。

終わっていない用事を抱えている人は、たしかにそのことが頭に浮かんできて、目の前の作業に集中しづらくなる。ところが「いつ、どこで、どうやって片づけるか」を具体的に決めて書き出した人は、その邪魔が消えていたのです。用事そのものは何ひとつ終わっていないのに、です。

論文のタイトルは「Consider it done!」——終わったことにしていい、という意味です。

つまり、頭を占領するのは「やり残していること」ではなく「やり残していて、しかも中身が決まっていないこと」。金曜に残すのが効くのは、残すと同時に中身が確定するからです。ぼんやりした「来週も仕事だ」が、「月曜はあの資料を仕上げる」という一点に変わる。

「いつ・何を」を先に決めた人ほど、実際に手が動く

もうひとつ、月曜の朝に効いてくる話があります。

心理学に「実行意図」という考え方があります。「いつ・どこで・何をするか」を前もって決めておくと、実際の行動に移せる確率が上がる、というものです。94件の研究をまとめた分析で、この効果ははっきり確認されています。

金曜に作業をひとつ残す行為は、これを未来の自分に手渡していることになります。「月曜の朝いちで、あの資料の仕上げをやる」。いつ・何を、が決まった状態で週明けを迎えられる。

月曜の朝、席に着いて最初の10分。何から手をつけるか迷っている時間が、いちばん腰が重くなります。その10分を、金曜のうちに消しておくということです。

残すなら、頭を使わずに手が動く作業を選ぶ

ここだけは選び方があります。何でも残していいわけではありません。

残していいもの

  • 資料の仕上げ、体裁の整え
  • データの入力、転記
  • 議事録やメモの清書
  • 定型のメール返信

共通しているのは、手をつけた瞬間から進む作業だということ。考え込む余地がないので、月曜の朝でも助走なしで動けます。

残してはいけないもの

  • 月曜が締切のもの
  • 誰かを待たせているもの
  • 方針から考える必要があるもの

これらを残すと、日曜の夜に効くのは安心ではなく焦りになります。あくまで自分の手の中で完結する、締切に余裕のある作業だけを選んでください。

金曜に一行だけ書いて帰った、その週末

——今までのあなた。

金曜は、きりのいいところまで片づけて帰る。達成感はある。けれど日曜の夕方になると、机の上が空っぽであることが逆に不安になる。「明日、何から始めるんだったか」。思い出せないまま、夜が更けていく。

——金曜にひとつ残すようになった、これからのあなた。

退勤前、資料をあと少し残したまま閉じる。手帳に一行だけ書く。「月曜:企画書の仕上げ」。

日曜の夜、いつもの重さが来かけたところで、その一行が浮かびます。

「ああ、明日はあれを仕上げるところから始めればいいんだ」

やることが決まっているというだけで、月曜は「読めない日」ではなくなります。

少し、私自身の話をさせてください。

私にも、日曜の夜がとにかく苦痛だった時期があります。職場が面白くなくて、しかも任される仕事が薄い。やることが少なくて時間が余る日が続いていました。それでも日曜の夜になると気は重くなる。今思えば、あの重さは仕事の量ではなく、月曜の輪郭がなかったことから来ていたのだと思います。

変わったきっかけは、金曜に資料の仕上げを残すようにしたことでした。全部終わらせずに帰る。月曜に「これから作業すればいいんだな」と分かる状態にしておく。それだけで、気持ちがずいぶん楽になりました。

しかも、やってみて分かったことがもうひとつあります。資料は時間を置いてから見直したほうが、自分のミスに気づきやすいのです。金曜に勢いで仕上げたものより、月曜の頭で見直したもののほうが精度が上がる。日曜の夜が軽くなるうえに、仕事の質も上がる。一石二鳥でした。

「でも、上司に見られたら手を抜いていると思われないだろうか」

残すのは締切に余裕のある作業だけです。誰かを待たせているわけでも、期限を破っているわけでもありません。むしろ見直しの時間を確保した分だけ、出てくるものは良くなります。

今週の金曜、退勤前の1分だけ使う

日曜の夜の憂鬱は、日曜の夜には動かせません。あの時間にできることは、せいぜい気を紛らわせることくらいです。

動かせるのは、金曜の退勤前です。

今週の金曜日、帰る前に1分だけ使ってください。やることは2つだけです。

  • 締切に余裕のある作業を、ひとつだけ手つかずで残す
  • 手帳かメモに一行書く。「月曜:◯◯の仕上げ」

それだけで、次の日曜の夜、頭に浮かぶ言葉が変わります。

全部終わらせて帰らなくていい。月曜の自分に、ひとつだけ手渡しておく。それが、日曜の夜を守るいちばん確実なやり方です。

参考文献

de Berker, A. O., Rutledge, R. B., Mathys, C., Marshall, L., Cross, G. F., Dolan, R. J., & Bestmann, S. (2016). Computations of uncertainty mediate acute stress responses in humans. Nature Communications, 7, 10996. doi:10.1038/ncomms10996全文

Masicampo, E. J., & Baumeister, R. F. (2011). Consider it done! Plan making can eliminate the cognitive effects of unfulfilled goals. Journal of Personality and Social Psychology, 101, 667–683. doi:10.1037/a0024192

Gollwitzer, P. M., & Sheeran, P. (2006). Implementation intentions and goal achievement: A meta-analysis of effects and processes. Advances in Experimental Social Psychology, 38, 69–119. doi:10.1016/S0065-2601(06)38002-1

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