チームメンバーの離脱で業務が停滞したときの対処法|抜け漏れを防ぐ引き継ぎの型

仕事の進め方・タスク管理

メンバーが抜けた後、誰がどの仕事を引き継いだのか、実はよくわかっていない。気づけば、宙に浮いたタスクがいくつも転がっている。そんな状況に頭を抱えていませんか。

「何が抜けているのか把握しきれていない」「引き継ぎが中途半端で誰も手をつけられない」「このままだと重要な仕事が抜け落ちてしまう」――そんな不安を感じたら、まずやるべきことがあります。「これなら抜け漏れを防げそう」と思える、シンプルな一枚のシートです。

仕事を一枚にまとめてもらう

やることはシンプルです。離脱するメンバーに(難しければ離脱後すぐにでも)、「①今抱えている仕事の一覧 ②それぞれの優先度・締切 ③引き継ぎ先」を一枚にまとめてもらってください。

頭の中にしかない情報は、本人がいなくなった瞬間にチームから消えてしまいます。細かい形式にこだわる必要はありません。箇条書きでいいので、抱えている仕事をすべて書き出してもらうことが最優先です。

頭の中にしかない仕事は、いなくなると消える

理由①:暗黙知は形にしない限り失われる

経営学者の野中郁次郎が提唱した知識創造理論では、個人の頭の中にしかない「暗黙知」は、言葉や図として「形式知」に変換されない限り、組織の資産にならないとされています。

メンバーが抱えていた仕事の背景や優先順位は、その人の頭の中にある暗黙知です。本人がいなくなる前に形式知に変換しておかなければ、その知識ごと失われてしまいます。

理由②:見える化しない限り、問題は解決できない

トヨタ生産方式には「見える化」という基本思想があります。問題は、目に見える形にしない限り、誰も気づけず、対処もできないという考え方です。

抱えている仕事が頭の中にあるだけでは、周囲は何が滞っているのか把握できません。一覧という形で見える化することで、初めてチーム全体で対処できるようになります。

理由③:属人化はブラックボックスを生む

仕事の一覧化は、単なる引き継ぎ作業ではありません。誰が見ても優先順位がわかる状態を作ることで、複数人で分担して拾えるようになります。

逆に、属人化したままにしておくと、抜けた人にしかわからない仕事がブラックボックスとして残り続け、後になって「誰も把握していなかった」という事態を招きます。

私の場合|引き継がれる側として、「一覧のなさ」を痛感した

私はこの一覧の大切さを、リーダー側ではなく引き継がれる側として痛感した経験があります。

先輩が異動でチームを抜けたときのことです。特に説明も引き継ぎもないまま、その先輩が担当していた作業を依頼されました。正直、何をして良いかわからない状態でした。

仕方なく、周りの人や依頼者に仕事の内容や目的を確認し、先輩が残した過去の成果物を掘り返しながら、手探りで進めました。急に湧いてきたタスクに自分の時間は削られ、やったことのない・知らない仕事なので見通しが立たず、作業のあいだずっと不安でした

もし「仕事の一覧・優先度・引き継ぎ先」が一枚でも残っていたら、あの手探りの時間も不安も、ほとんどなかったはずです。引き継がれる側を経験したからこそ言えます。一覧は、残されたメンバーを守るためのシートなのです。

「これ、誰が引き継いでいますか?」が起きなくなる

想像してみてください。

今のあなたのチームでは、メンバーが抜けたあと、こんな会話が起きています。

「この作業って、誰が引き継いでいますか?」

「あれ、〇〇さんの担当だったよね……誰も聞いていないの?」

数日後には、若手が不安そうに相談に来ます。

「急にこの仕事を頼まれたんですが、何から手をつければいいのか……」

宙に浮いたタスクが見つかるたびに、チーム全体が手探りになっていきます。

でも、一覧を作れたあなたのチームは、違います。

離脱が決まった時点で、あなたはこう頼みます。

「抱えている仕事を、優先度と引き継ぎ先も入れて、一枚にまとめてもらえますか」

メンバーが抜けたあとの会話は、こう変わります。

「Aの業務は△△さん、Bは私が引き継ぎです。一覧に書いてあります」

「来週締切のものが2つあるので、先にそちらから拾いましょう」

引き継いだ若手も、見通しを持って動けます。

「過去の成果物の場所も書いてあったので、思ったより早く進められそうです」

宙に浮くタスクはなくなり、業務は止まらず、残されたメンバーの不安も最小限で済みます。「誰も把握していなかった」という事態は、もう起きません。

見える化が、抜け漏れを防ぐ一番確実な方法

チームメンバーの離脱で業務が停滞したときは、抱えている仕事を「一覧・優先度・引き継ぎ先」の3点で一枚にまとめてもらってください。見える化することが、抜け漏れを防ぐ一番確実な方法です。

参考文献

  • Nonaka, I. (1994). A dynamic theory of organizational knowledge creation. Organization Science, 5(1), 14–37. doi:10.1287/orsc.5.1.14
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