チームメンバーが辞めてしまってから、何となくチーム全体の空気が重い。誰も口には出さないけれど、以前のような活気がない。そんな変化を感じていませんか。
「もうこのチーム、大丈夫なんだろうか」「自分たちの負担が増えるだけじゃないか」「何か声をかけなきゃと思うけど、何を言えばいいかわからない」――リーダーとして、この空気にどう向き合えばいいのか迷いますよね。でも実は、特別な演説は必要ありません。「これなら士気を立て直せそう」と思える、シンプルな一言があります。
離脱したら、なるべく早く一言を伝える
やることはシンプルです。メンバーが離脱したら、できるだけ早く「①感謝と経緯の共有 ②今後の役割分担」をチームに一言伝えてください。
「〇〇さんには本当にお世話になりました。異動の理由は△△です」と経緯を簡潔に共有し、「今抱えている仕事は、当面こう分担します」と方向性を示す。すべてが決まっていなくても構いません。沈黙をつくらないことが何より重要です。
説明がない時間ほど、悪いほうへ想像が進む
理由①:不確実性低減理論
心理学に「不確実性低減理論」という考え方があります。人は状況が曖昧なままだと不安を感じ、その不安を埋めるために悪い方向へ想像を膨らませてしまう、というものです。
何も説明がないまま時間が過ぎると、メンバーは「言えない事情があるのでは」「自分たちも危ないのでは」と、実際以上に悪く受け止めてしまいます。早い段階で情報を渡すことが、余計な想像を止める一番の方法です。
理由②:伝達不足という敵
組織変革の研究で知られるジョン・コッターはこう言っています。「変革の最大の敵は抵抗ではなく、伝達不足である」。
メンバーの離脱は、チームにとって小さな変化です。この変化にどう対応するかを丁寧に伝えることが、抵抗や不安を防ぐ最大の鍵になります。伝えなければ、変化そのものよりも「伝わっていないこと」が不安の原因になってしまうのです。
理由③:役割の曖昧さが不安を長引かせる
役割の再配分が曖昧なままだと、残ったメンバーは「自分の負担が増えるのでは」という不安を抱え続けます。
たとえ完璧な分担案でなくても、「当面はこう進める」という方向性が示されるだけで、不安は具体的な見通しに変わります。曖昧さを放置しないことが、士気を守る一番のポイントです。
私の場合|「沈黙される側」のメンバーとして経験した
私はこの一言の大切さを、リーダー側ではなく沈黙される側のメンバーとして経験しました。
先輩が異動でチームを抜けたときのことです。発表は突然で、リーダーや上司からチームへの説明は特にありませんでした。経緯も、今後の分担の話もないままです。
正直、そのときの私は「自分の仕事に影響は出ないだろう」と思っていました。それでも、チームの環境が変わるのに何の説明もないという事実に、「このチームで大丈夫かなぁ」という不安がわいてきたのです。
その後も説明がないまま時間が過ぎ、モヤモヤはずっと消えませんでした。しかも結局、先輩の作業を引き継ぎもないまま任されることになり、不安は現実になりました。あのとき「経緯」と「当面の分担」を一言でも聞けていたら——沈黙される側を経験したからこそ、早めの一言の価値を断言できます。
重い空気のまま、時間が過ぎなくなる
想像してみてください。
今のあなたのチームでは、メンバーの離脱が発表されたあと、重い空気が流れています。
あなたは「落ち着いてから話そう」と思って、まだ何も伝えていません。でもメンバーは、心の中でこうつぶやいています。
「何があったんだろう。何も説明がないけど……」
「このチーム、大丈夫なのかな」
「あの人の仕事、誰がやるんだろう。自分に来るのかな」
口には出さないままモヤモヤだけが積もり、チームの活気は少しずつ失われていきます。
でも、早めの一言を伝えられたあなたは、違います。
離脱がわかったその週のうちに、チームにこう伝えます。
「〇〇さんには本当にお世話になりました。異動の経緯は△△です」
「抱えていた仕事は、当面この分担で進めます。詳細は決まり次第、また共有します」
メンバーの反応が変わります。
「わかりました。じゃあ、私はAの業務を引き継ぎますね」
「経緯がわかってスッキリしました」
すべてが決まっていなくても構いません。「ちゃんと伝えてくれるリーダーだ」という安心感が、チームの空気を守ります。沈黙の代わりに一言を置くだけで、士気は思っている以上に保たれるのです。
沈黙が、不安を膨らませる
チームメンバーが離脱して士気が下がったときは、なるべく早く「感謝と経緯」「今後の役割分担」を一言伝えてみてください。沈黙は不安を膨らませます。早めの一言が、チームの安心を取り戻す一番の近道です。
参考文献
- Berger, C. R., & Calabrese, R. J. (1975). Some explorations in initial interaction and beyond: Toward a developmental theory of interpersonal communication. Human Communication Research, 1(2), 99–112. doi:10.1111/j.1468-2958.1975.tb00258.x

