頑張っても評価されない|評価は、やったことではなく思い出されたことで決まる

頑張っても評価されない|評価は、やったことではなく思い出されたことで決まる 仕事の進め方・タスク管理

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頑張っているのに、評価されない。

それで検索してみると、出てくるのは「評価されない人の特徴」という記事ばかりです。頑張る方向がズレている。アピールが足りない。自己表現ができていない。ひとつずつ自分に当てはめては、そうかもしれないと思って、少し落ち込む。

でも、心のどこかでは納得できていないはずです。本当に自分が悪いのか。それとも、この会社の評価がおかしいのか。どちらなのか分からないまま、また明日が来る。

この記事は、その「どちらなのか」を確かめる方法の話です。評価を上げる方法ではありません。

評価は、やったことではなく「思い出されたこと」で決まる

先に、いちばん大事なことを書きます。

あなたの頑張り方がズレているとは限りません。評価という仕組みには、頑張りの総量が届かない性質があります。理由は次の章に書きますが、先にやることだけ置いておきます。

終業時に、今日やったことを1行だけ記録する。

「A社向け資料を修正」「新人の質問に対応」——そのくらいの短さで構いません。フォーマットもいりません。

これは、評価の場でアピールするための準備ではありません。3か月続けて、それでも評価が変わらなかったとき、原因はあなたではないと言い切るための材料です。自分を責めるのをやめるために書きます。

なぜ、頑張りの総量は評価に届かないのか

理由は3つあります。どれも、あなたの能力や努力の話ではありません。

理由①:人は「思い出しやすさ」で、量を判断してしまう

トベルスキーとカーネマンは、人が「それがどれくらい多いか」を判断するとき、実際に数えるのではなく思い出しやすさで代用していることを示しました。利用可能性ヒューリスティックと呼ばれます。

評価の場面に当てはめると、こうなります。上司は査定の時期に、十数人分の1年を思い出しながら評価をつけています。そのとき使われるのは、あなたが実際にやった量ではなく、上司が思い出せた量です。

目立ったトラブル対応や、直近の出来事は残ります。半年前にコツコツ積み上げた改善や、裏方で回した仕事は、本人が思っている以上に抜け落ちます。上司の怠慢ではなく、記憶の仕組みの話です。

理由②:出来事の評価は、長さではなくピークと終わりに寄る

ここがいちばん残酷なところです。

フレドリクソンとカーネマンは、人が過去の出来事をあとから評価するとき、その出来事が「どれだけ長く続いたか」がほとんど反映されないことを示しました。持続時間の無視と呼ばれます。レデルマイヤーとカーネマンの研究でも、同じことが確かめられています。判断に効いていたのは、いちばん強かった瞬間と、終わり際でした。

つまり、1年間ずっと頑張り続けたという「長さ」は、そもそも評価に入りにくい。入るのは、印象の強かった一点と、直近です。

「これだけ長くやってきたのに」が届かないのは、あなたの伝え方が下手だからではありません。長さは、もともと評価されにくい形をしているのです。

理由③:そして、あなた自身も忘れている

エビングハウスの忘却曲線として知られるとおり、人は経験したことを、その日のうちに忘れ始めます。ムーレとドロスが2015年にこの実験を再現したところ、おおむね同じ形の曲線が得られました。100年以上前の話が、いまも成り立っています。

だから、評価面談で「この1年、何をやりましたか」と聞かれて出てくるのは、直近の1〜2か月だけになります。記憶力の問題ではありません。

3つを合わせると、こうなります。上司も忘れる。長さは評価に入らない。自分も忘れる。この3つが重なった場所で、あなたの1年は判定されています。

やること|終業時に、1行だけ

だから、記録します。手元に事実がなければ、自分が悪いのかどうかすら判断できないからです。

書くもの——「やったこと」を、次の3つの形で拾います。

  • 今日やったこと:「A社向け資料を修正」「請求書の締め処理」
  • 誰に何を渡したか:「新人の質問に対応」「他部署の問い合わせを引き取った」
  • 「ありがとう」と言われたこと:「後輩の資料作成を手伝って感謝された」——数字にならない働きは、理由①でいちばん先に抜け落ちます。感謝された事実は、その働きが確かに誰かの役に立ったという、いちばん残しやすい形の証拠です。

書かなくていいもの

  • ❌ 感想(「疲れた」「うまくいかなかった」)
  • ❌ 反省(「もっと早くできたはず」)
  • ❌ 自己評価(「今日はダメだった」)

書くのは事実だけです。評価も反省も入れません。判断は、3か月分たまってからします。

1日1行なら、1分もかかりません。それでも3か月で60行を超えます。

何を書けばいいか迷うなら、上司に聞いてしまうのが早いです。「今期、特に力を入れるべきポイントはどこですか」。評価期間の始まりに、この一言を相談の形で聞いておくと、返ってきた答えがそのまま記録する対象になります。もし曖昧な答えしか返ってこなかったら、それも1行書いておいてください。基準を答えられない相手に基準どおり評価してもらうことはできない、という判断材料になります。

そして、たまった1行は年に1回まとめて出さないでください。日常のやり取りに小出しにします。「例の件、対応しておきました」「先方の確認、取れています」。自慢する必要はなく、事実を渡すだけです。理由②のとおり、評価に効くのはピークと終わりなので、年1回の提出より、何度も触れられるほうが残ります。

なお、このブログには仕事、このままでいいのか|原因は思い出せない。来た瞬間に1行残すという記事もありますが、書くものが違います。同じ1行でも、確かめたいことが違えば書く内容が変わります。あちらは自分の気持ちが動いた瞬間を、こちらは自分がやった事実を書きます。

自分を責めるのを、やめられる

——今までのあなた。

「評価されない人の特徴12選」を読んでは、自分に当てはめて落ち込む。

「(結局、自分が悪いってことなんだろうな……)」

でも本当にそうなのかは、確かめようがない。会社を責めるのも違う気がして、どちらにも決められないまま消耗していく。

——3か月、1行を書いたあなた。

メモには60行を超える事実が並んでいます。あなたはそれを見ながら、初めてこう言えます。

「(自分は、やっていた)」

そのうえで評価が変わらなければ、それはあなたの努力の問題ではなく、評価する側の仕組みの問題です。逆に、記録を見て「たしかに、求められていた方向とは違っていたかもしれない」と思えたなら、それも収穫です。どちらに転んでも、宙ぶらりんが終わります。

私自身、自己評価を書こうとして真っ白な入力欄の前で固まったことがあります。直近の1〜2か月なら思い出せる。でも期の前半は、ほぼ白紙でした。毎日忙しく働いていたはずなのに、です。あのとき痛感したのは、頑張りは、覚えていなければ「なかったこと」と同じになるということでした。記録がなければ、評価は実力勝負ではなく記憶力勝負になります。

今日やること

準備するものはありません。スマホでも手帳でも構いません。

今日の終業時に、1行だけ書いてください。

「◯◯を仕上げた」「△△さんの◯◯を手伝った」。それだけです。

うまく書こうとしないでください。事実が1つ残れば、今日は成功です。

3か月書いても、変わらなかったら

ここからは、その先の話です。

3か月分の記録がたまって、それを持って評価の場に立って、それでも評価が動かなかった。そのときは、原因はあなたではなく、評価の軸そのものが合っていない可能性があります。

ただ、それを社内で判断するのは難しい。比べる相手が、同じ評価制度の中にしかいないからです。ハリスとショウブルックが自己評価と上司評価を突き合わせたメタ分析でも、両者の一致度は決して高くないことが示されています。自分の内側をいくら見つめても、答えは出ません。外から言ってもらうしかない種類の問いです。

外の物差しを、一度だけ当ててみる

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順番は変えないでください。先に3か月、記録することです。手元に事実がない状態で外の人に会っても、話せるのはやはり「思い出せた分」だけになります。

評価されなかったのは、頑張りが足りなかったからではない

上司も忘れます。長さは評価に入りません。あなた自身も忘れます。その3つが重なった場所で、1年が判定されています。頑張りが足りなかったのではなく、頑張りが残る形になっていなかっただけです。

今日の終業時に、1行だけ残してください。3か月後、あなたは初めて「自分が悪いのか、そうでないのか」を、自分で判断できるようになります。

参考文献

  • Tversky, A., & Kahneman, D. (1973). Availability: A heuristic for judging frequency and probability. Cognitive Psychology, 5(2), 207–232. doi:10.1016/0010-0285(73)90033-9
  • Fredrickson, B. L., & Kahneman, D. (1993). Duration neglect in retrospective evaluations of affective episodes. Journal of Personality and Social Psychology, 65(1), 45–55. doi:10.1037/0022-3514.65.1.45
  • Redelmeier, D. A., & Kahneman, D. (1996). Patients’ memories of painful medical treatments: real-time and retrospective evaluations of two minimally invasive procedures. Pain, 66(1), 3–8. doi:10.1016/0304-3959(96)02994-6
  • Murre, J. M. J., & Dros, J. (2015). Replication and analysis of Ebbinghaus’ forgetting curve. PLOS ONE, 10(7), e0120644. doi:10.1371/journal.pone.0120644
  • Harris, M. M., & Schaubroeck, J. (1988). A meta-analysis of self-supervisor, self-peer, and peer-supervisor ratings. Personnel Psychology, 41(1), 43–62. doi:10.1111/j.1744-6570.1988.tb00631.x
  • Ebbinghaus, H. (1885). Über das Gedächtnis: Untersuchungen zur experimentellen Psychologie. Duncker & Humblot.

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